
はじめに
この記事では「就活生=投資家」「就職=自分という資本を企業に投資する」と定義した上で、いわゆる就活生に人気の上場企業を「有価証券報告書」という上場企業なら毎年提出しなければならない成績表に書かれている「数字」という客観的事実のみで見てみようとするものです。
なのでここに書かれていることは、あくまで企業に対する直感を補足するものないしは裏付けるものとして捉え、就活に役立ててもらいたいと思っています。
では就活人気企業として、カルビーを取り上げます。
目次
どんな仕事の種類があるのか
カルビーの事業は単一のセグメントなのでセグメント構成比は省き、従業員1人あたりの売上と利益から見てみましょう。

※売上/従業員数・利益/従業員数の単位は百万円
比べる対象がないのでなんとも言えませんが、1人あたりの利益/売上に注目してみましょう。
これはいわゆる営業利益率と呼ばれるもの(=営業利益÷売上高)で本業の利益効率を示す指標なのですが、2017年度の東証一部上場企業の営業利益率の平均値が7.1%であることを鑑みると、この会社は割と高い営業利益率を誇っていることがわかります。
どこの国で仕事をしているのか

地域別 順位
- 1位:日本
- 2位:その他
- 3位:北米
- 4位:中国
思いっきりドメスティックな企業で海外進出はあまり進んでいないことがわかります。
逆に言えば今後上手い具合に海外市場に切り込んで行ければ業績の更なる成長が可能です。
会社の安定性を測る指標
- A:流動比率&自己資本比率
- B:CF計算書
A:流動比率&自己資本比率

メーカーとは思えないほど、財務の健全性が非常に高いことがわかります。
これで景気の波に左右される業態でないのならば、倒産する可能性はほぼほぼ無くなるものと思われます。
B:CF計算書

※単位は百万円
こちらもまた非常にキレイで健全で堅実なCF計算書です。
ここまでのところでは会社としては全く問題がないです。
会社の成長性を測る指標

※単位は百万円
健全で堅実な経営をしているだけでなく、徐々に成長していっていることがわかります。
いまのところこの会社は超優良企業である可能性が非常に高いです。
投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い
- A:ROE(自己資本利益率)
- B:FCF(フリーキャッシュフロー)
- C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移
A:ROE(自己資本利益率)
ROE、つまり「投資家から預かったお金を使っていかに効率良く利益を出しているか」という観点で企業をチェックする場合、全世界的に見て
- 5%未満=最悪
- 5%=微妙に悪い
- 10%=普通
- 15%=まあまあ良い
- 20%以上=素晴らしい
となります。
ではROEの直近3年間の推移を見てみましょう。

ROEに関しても常時普通以上はキープしてます。
やはり弱点があまり見つからないです。
B:FCF(フリーキャッシュフロー)

※営業CF・実質設備投資・ネットFCFの単位は百万円
割と設備投資にお金を使っているようです。
ここで弱点らしきものがようやく見えましたが、なんだかんだで自由に使えるお金はけっこう残っています。
C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

※単位は百万円
この会社は意外なことに上場が2011年3月でリーマンショック時のど真ん中のデータは拾ってこれなかったので近い年度のデータを記載しています。
売上高・純利益ともにグングン伸びていっていることから不況への耐性はかなり強いものと思われます。
まとめ
これまでカルビーを数字で見てきたことをまとめると、
- ・単一セグメントのシンプルな事業ポートフォリオ
- ・売上の約9割が日本の超ドメスティックな企業で、海外市場の開拓は進んでいない
- ・営業利益率は平均以上
- ・財務は超健全で経営も堅実
- ・成長軌道に乗っている
- ・ROEは普通くらい
- ・不況耐性はかなり強いものと思われる
ということになるでしょう。
ES・面接での想定訴求ポイント
ここでは有価証券報告書で調べてきたことを実際のESや面接でどうやって活かしていけるか、という点に絞って想定される訴求ポイントを挙げます。
ROEを除いては日本屈指の超優良かつ超安定企業であること
数字を見てきた感じだとこの会社は「成長軌道に乗っており、財務も健全で景気に左右されにくい安定した事業を営んでいる」というほぼ無敵の理想的な企業です。
加えて日本人のほぼ全員が知っている有名ブランド(ポテトチップス・かっぱえびせん・サッポロポテト・じゃがりこ・堅あげポテト・じゃがポックル・フルグラなど)をいくつも保有しているという援護射撃まであります。
おそらくこの会社に就職したならば、とんでもない事件を起こさない限りは社会的にも経済的にも安定した生活が送れると思われます。
世間的な印象はどちらかと言うと地味ですが、実態は日本屈指のとんでもなく優良な企業で、筆者の個人的な意見としてはトヨタに就職するよりもこの会社に就職した方がよっぽど良いと考えています。
そういう意味では仕事に安定を求める誰もが目標とすべきこの会社ですが、会社側の需要が記載されているおなじみ「対処すべき課題等」には
- 「海外事業の拡大(海外売上比率30%が当面の目標)」
- 「新製品開発」
- 「国内マーケットシェア拡大(ポテトチップス国内市場シェアは約72%)」
- 「ペプシコとの連携強化」
- 「ライセンス契約と事業買収」
- 「新規事業開発」
の6つがトピックスとして挙げられています。
個人的には「海外事業の拡大」が会社側の需要として一番大きいのではないかと推測するので、ESや面接では「海外で働きたい意志が強くあること」をアピールするのがベターなのではないかと考えます。
有価証券報告書で調べたことから使えそうなところを捻り出すとしたら、上記のようになると思います。
有価証券報告書だけでなく、企業の「IR情報」という投資家に向けて公表している情報には業績や今後の方針などをわかりやすくパワーポイントでまとめたものもあるので、興味を持たれた方はそちらも見てみると良いかもしれません。