
ここでは日本の大手葬儀会社の
- ・燦HD
- ・ティア
- ・平安レイサービス(以下:平安)
の3社を有価証券報告書に記載されている事柄から比較することで、イメージではなくその企業ひいてはその業界の「事実」の確認が出来ればと思っています。
目次
①主要子会社・関連会社の比較

②事業規模の比較(単位:百万円)

売上 順位
- 1位:燦HD
- 2位:ティア
- 3位:平安
純利益 順位
- 1位:燦HD
- 2位:平安
- 3位:ティア
事業規模では燦HDが圧倒的に大きいことがわかります。
しかし純利益を見てみると事業規模で劣る平安が燦HDにかなり肉薄しつつあることがわかります。
③安全性の比較

流動比率 順位
- 1位:平安
- 2位:燦HD
- 3位:ティア
自己資本比率 順位
- 1位:燦HD
- 2位:ティア
- 3位:平安
平安は他の2社と比べると異次元の流動比率の高さを有しており、燦HDは普通でティアは若干アウト気味なことがわかります。
ただ自己資本比率に関しては燦HDがかなり優秀な水準を達成しており、他の2社と比べて財務基盤がかなり強固であることがわかります。
④利益性の比較

純利益率 順位
- 1位:平安
- 2位:ティア
- 3位:燦HD
平安が圧倒的に良いようです。
ネットFCF 順位
- 1位:平安
- 2位:燦HD
- 3位:ティア
純利益で燦HDに肉薄した平安がネットFCFにいたってはトップに立っています。
ティアは事業規模通りと言った感じです。
実質設備投資/営業CF 順位
- 1位:平安
- 2位:燦HD
- 3位:ティア
平安の自由資金の多さは他の2社と比べてもかなり低い水準におさえてある設備投資比率に起因するようです。
在庫回転率 順位
- 1位:燦HD
- 2位:ティア
- 3位:平安
在庫回転率は燦HDが1位となっており、ティアがそれに続きます。
ただティアと平安は事業規模ではそこまでの差がなかったのに在庫回転率で約2倍の開きがあるということを鑑みると、ティアよりも平安の方が提供するサービスの単価が約2倍近く高いのではないかという推測が出来ます。
⑤コスト&研究開発費の比較

※研究開発費は各社とも計上していないので今回は省略します。
販管費/売上 順位
- 1位:燦HD
- 2位:平安
- 3位:ティア
販管費は燦HDがかなり低くおさえているようです。
ティアは他の2社と比べて割と販管費にお金がかかっているようです。
おそらくこの販管費率の差が事業規模が同じくらいのティアと平安との純利益額の差につながっているものと思われます。
⑥従業員1人あたりの売上&利益の比較

売上/従業員(単位:百万円) 順位
- 1位:平安
- 2位:燦HD
- 3位:ティア
営業利益/従業員(単位:百万円) 順位
- 1位:平安
- 2位:ティア
- 3位:燦HD
1人あたり営業利益/売上 順位
- 1位:平安
- 2位:ティア
- 3位:燦HD
個人技では平安が3項目とも圧勝しての1位となっています。
燦HDは売上ではティアに勝っていますが、営業利益と営業利益率ではティアの後塵を拝していることから、個人技自体は3社の中でそこまで強くないことがわかります。
⑦事業セグメントの比較
燦HD



※
- 「公益社グループ」
- (株)公益社が関西圏並びに首都圏における葬祭サービスの提供など
- 「葬仙グループ」
- (株)葬仙が鳥取県米子市、鳥取市及び島根県松江市とこれらの周辺地域における葬祭サービスの提供など
- 「タルイグループ」
- (株)タルイが兵庫県明石市とその周辺地域における葬祭サービスの提供など
- 「持株会社グループ」
- (株)公益社、(株)葬仙及び(株)タルイが使用する葬儀会館等の不動産の賃貸、エクセル・サポート・サービス(株)に対する事業所・駐車場等の賃貸、連結子会社4社に対して役員を通じての経営指導など。
「持株会社グループ」は実質本社機能かと思われるので他の3セグメントを比較していきますが、そうすると「公益社グループ」がこの会社の稼ぎ頭であることがわかります。
「葬仙グループ」と「タルイグループ」と比べると対象地域が違うので売上と営業利益の額に差が出るのはまだわかるのですが、同じ葬祭サービスなのに営業利益率に明らかな差がついているのは何とも理解し難いところがあります。
考えられるのは「公益社グループ」と「タルイグループ」は損益分岐点を大幅に超えた売上を達成しているので営業利益率が高くなっており、「葬仙グループ」は損益分岐点を少しだけしか超えていないので営業利益率が低くなっているのではないかということです。
それか鳥取県と島根県にものすごく強い競合他社がいるのかもしれません。
いずれにせよこの会社内で目下テコ入れ対象はおそらく「葬仙グループ」だと思います。
ティア



※
- 「葬祭」
- 直営会館として「葬儀会館ティア」を東海地区、関東地区、関西地区に展開など。
- 「フランチャイズ」
- 異業種の事業会社を対象にフランチャイズ契約を締結し、葬儀業界への参入ノウハウの提供と物件開発、スーパーバイザーによる開業・営業・運営支援・葬儀付帯品の販売等。
直営の「葬祭」が明らかにこの会社の稼ぎ頭なのですが、営業利益率では「フランチャイズ」が「葬祭」に勝っています。
なので会社としてはこの「フランチャイズ」を今後いかに伸ばしていけるかが成長の肝になっていきそうです。
平安



※
- 「冠婚」
- 「コルティーレ茅ケ崎」「ロイヤルマナーフォートベルジュール」の2拠点の婚礼施設を有し、一般個人、互助会加入者に結婚式を施行。
「サロンドプリエ」で結婚式、成人式、七五三等の慶事用貸衣裳、写真撮影、着付け等のサービスの提供。 - 「葬祭」
- 「湘和会堂」「カルチャーBONDS」「湘和礼殯館」「湘和会館」「エンディングプレイス」などの葬祭施設を有し、一般個人、互助会加入者、法人向けに葬儀にかかる各種サービス(個人葬、社葬等)を施行する他、自宅や寺院、集会所で葬儀施行サービス並びに仏壇仏具販売等の付帯サービスを行う。
県内及び近隣県の葬祭事業者とパートナーシップ契約の締結や、葬儀の小規模化に対応したノウハウを中心としたフランチャイズパッケージの加盟社を募集など。 - 「互助会」
- 株式会社へいあんが神奈川県湘南エリアを地盤とする冠婚葬祭互助会を主たる事業とし、互助会加入者の募集営業並びに互助会加入者の情報管理業務など。
- 「介護」
- 株式会社へいあんが神奈川県藤沢市、茅ケ崎市、平塚市、小田原市において、在宅サービス及び施設サービスを業務とした介護サービス、並びに高齢者向け賃貸住宅事業。
- 「その他」
- 山大商事株式会社が物流事業(諸施設への料理、返礼品等の提供)を行う。
他の2社と違い、大手葬儀会社でありながら「冠婚」や「介護」も行っているようです。
そういう意味ではほぼほぼ「ゆりかごから墓場まで」がこの会社の事業対象のようです。
ただ「冠婚」と「介護」の各種貢献度は割と低く、あくまでも「葬祭」がメインの会社であるようです。
そして特筆すべきは各事業の営業利益率の高さで、「介護」以外は10%を優に超えています。
「葬祭」は言わずもがなで営業利益率が高いのですが、「互助会」にいたっては異常な営業利益率を誇っています。
いちおう海外売上比率を見てみましょう。
ティアと平安は国内オンリーで、燦HDは若干ですが海外進出しているようです。

⑧まとめ
これまで見てきた 社の順位を「利益性」「コスト」「安全性」「チーム力」「個人技」の括りで下記します。
※各数値の偏差値を基準として順位を算出しています。偏差値の平均は50です。
※平均以下の項目を赤字で示しています。

利益性 総合順位
- 1位:平安(偏差値:61)
- 2位:燦HD(偏差値:53)
- 3位:ティア(偏差値:37)
事業規模では最下位の平安でしたが、それ以外の項目で軒並み高順位を連発して総合1位となっています。
燦HDは事業規模では圧倒的な1位でしたが、主に個人技などで足を引っ張った結果2位ということになっています。
ティアは軒並み低空飛行という印象です。

コスト 総合順位
- 1位:平安(偏差値:61)
- 2位:燦HD(偏差値:52)
- 3位:ティア(偏差値:37)
コスト効率でも平安が1位となっており、燦HDとの明暗を分けたのは設備投資比率の差のようです。

安全性 総合順位
- 1位:燦HD(偏差値:58)
- 2位:平安(偏差値:56)
- 3位:ティア(偏差値:36)
財務の健全性は僅差で燦HDが1位となっています。
平安は流動比率では圧勝でしたが自己資本比率で燦HDに追い抜かされた形になっています。
ティアはもうちょっと頑張りましょう、といった感じです。

チーム力 総合順位
- 1位:燦HD(偏差値:59)
- 2位:平安(偏差値:54)
- 3位:ティア(偏差値:36)
チーム力では事業規模が大きく影響し燦HDが1位となっていますが、事業規模では明らかな差がある平安にかなり肉薄されているようです。

個人技 総合順位
- 1位:平安(偏差値:64)
- 2位:燦HD(偏差値:43.2)
- 3位:ティア(偏差値:42.7)
個人技では他の2社を大きく引き離して平安が圧勝しています。
そしてチーム力ではかなりの差があった燦HDとティアですが、個人技ベースでは同じくらいの強さのようです。
要はティアは投下人員数が燦HD並みになればチーム力も燦HD並みになれるポテンシャルはあるのではないかと推測出来ます。

総合順位
- 1位:平安(偏差値:60)
- 2位:燦HD(偏差値:54)
- 3位:ティア(偏差値:36)
総合では平安が1位となっています。利益効率の良さや個人技の圧倒的な強さが大きくプラスに働いたものかと思われます。
燦HDは事業規模での大きなリードを他の項目で溶かしたという結果になったようです。
ティアは概ね目立つことが出来なかったという印象です。
各社の特徴をまとめると以下のようになります。

- 強み:事業規模、チーム力、財務の健全性
- 弱み:個人技

- 強み:特になし
- 弱み:コスト効率、財務の健全性、チーム力、個人技

- 強み:コスト効率、個人技
- 弱み:特になし
⑨志望動機として使えそうな点
燦HD
事業規模的に業界最大手である点
会社としての総合的なクオリティでは平安に負けましたが、それでも事業規模的には「業界最大手」ということには疑いようもありません。
なので「業界最大手の看板を背負って働きたい」という人には最も向いているかもしれません。
ティア
燦HDに匹敵するポテンシャルを有している点
他の2社と比べてここまでのところ取り立てて目立つことがなかったこの会社ですが、個人技を見ると燦HDと遜色ないことが確認出来ました。
そういう意味では今後投下人員数及び事業規模が順調に成長していけば、燦HDと並ぶことが出来るポテンシャルを有していると考えられます。
特に「フランチャイズ」を伸ばすことが出来ればその可能性は高まると思うので、「今後の伸びしろが多く残されていそうな会社に就職して、会社の成長と共に自分も成長していきたい」と考えている人にとっては最も向いているかもしれません。
平安
営利企業としては業界最優良企業である点
コスト効率の良さ、個人技の圧倒的な強さなど、営利企業としてはこの会社は業界内で最優良企業であることを確認してきました。
なので仕事で求められる水準も高く、会社内での競争もかなり激しいものと想定されるので「厳しい競争環境の中でバリバリ働いていきたい」という人にとっては最も向いているかもしれません。
これまでまとめてきた事項は数字を元にした会社の実態ではありますが、より正確に実態を掴むためにも説明会で質問してみたり実際に社員の人に会ったりして、調べた情報とズレていないかどうかを確認してみた上で、ESや面接で使用することをおすすめします。