
はじめに
この記事では「就活生=投資家」「就職=自分という資本を企業に投資する」と定義した上で、いわゆる就活生に人気の上場企業を「有価証券報告書」という上場企業なら毎年提出しなければならない成績表に書かれている「数字」という客観的事実のみで見てみようとするものです。
なのでここに書かれていることは、あくまで企業に対する直感を補足するものないしは裏付けるものとして捉え、就活に役立ててもらいたいと思っています。
では就活人気企業として、ニトリホールディングス(以下:ニトリ)を取り上げます。
※通常時は「どんな仕事の種類があるのか」と「どこの国で仕事をしているのか」を記載していますが、ニトリの場合は「仕事の種類=家具の製造・販売」「どこの国で?=日本での売り上げが90%以上」のため、今回は記載しませんので、ご了承下さい。
目次
会社の安定性を測る指標
- A:流動比率
- B:自己資本比率
- C:CF計算書
A:流動比率

短期的な資金繰りはほぼ全く問題が無さそうです。
B:自己資本比率
これは「純資産(会社が保有している返さなくていいお金)」を「総資産(会社が保有している純資産や借金を含めた全てのお金)」で割ったものです。
これでわかるのは会社が保有している全ての資産(現金、建物、商品在庫など)の内、何割を返さなくてもいいお金でまかなっているのかということです。
具体的な数値で見てみましょう。
グループ全体連結

ニトリは総資産のほぼ全てを自己資本でまかなっているようなので、財務状態は超がつくほど健全と言えるでしょう。
いちおう「ニトリ本体」のみの数字も見てみましょう。
単体

本体のみだと更にパワーアップしている感じです。
このニトリ本体は本社の役員や子会社などの幹部の総勢275名で構成されたいわば「幹部会」なので、就活生のみなさんは今回に関しては連結の数字を見ないと意味がありません。
ですが
連結でも単体でも数字を見る限りでは、「倒産」の2文字とはほぼ縁のない超優良企業と言えそう
です。
C:CF計算書
CF計算書はどうなっているかというと、

完璧ですね。
まず各年「営業CF>純利益」となっているため、見た目よりも多くお金を稼いでいます。
そしてその営業CFの範囲内で投資CFによる支出を留めています。
最後に財務CFで株主への配当や借金返済にちゃんとお金を使っています。(そもそも借金は少ないですが)
これは日本企業の中では、ひいては世界の企業の中でもなかなか見れない非常に整っていてキレイなCF計算書です。
会社の成長性を測る指標

着実に成長していっているのがわかると思います。
ちなみにこの時点でニトリは29期連続で増収増益を達成しているそうです。(1988年2月期~2017年2月期まで)
投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い
- A:ROE(自己資本利益率)
- B:FCF(フリーキャッシュフロー)
- C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移
A:ROE(自己資本利益率)
ROE、つまり「投資家から預かったお金を使っていかに効率良く利益を出しているか」という観点で企業をチェックする場合、全世界的に見て
- 5%未満=最悪
- 5%=微妙に悪い
- 10%=普通
- 15%=まあまあ良い
- 20%以上=素晴らしい
となります。
ではROEの直近3年間の推移を見てみましょう。

ROEに関しては普通~まあまあ良いのレベルのようです。
B:FCF(フリーキャッシュフロー)

FCFの内容に関しては先ほど見た「CF計算書」とほとんど変わりがないようです。
いずれにせよ投資でお金を使った後でも手元に自由に使える資金を残せており、しかもその額が年々増えていっていることがわかります。
とりあえずニトリに関しては「投資CF=実質設備投資による支出」と捉えて問題がなさそうです。
C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

リーマンショック時の経営成績の推移ですが、数字を見ると大不況の影響をみじんも感じません。
家具の製造・販売という業態によるものもあるのでしょうが、とりあえず不況にはかなり強いと言ってよいかもしれません。
まとめ
これまでニトリを数字で見てきたことをまとめると、
- ・財務状態は超健全
- ・年々成長している
- ・CF的にものすごくキレイな経営をしている
- ・利益効率は普通より少し良い
- ・不況にはかなり強いかもしれない
- ・総合的に見て日本屈指の超優良企業に見える
ということになるでしょう。
ES・面接での想定訴求ポイント
ここでは有価証券報告書で調べてきたことを実際のESや面接でどうやって活かしていけるか、という点に絞って想定される訴求ポイントを挙げます。
対処すべき課題から攻める
ニトリは国内では無双しており、経営陣も数字にかなり気を遣って経営しているため、商売の完成度はかなり高いです。
そこで有報内にある「対処すべき課題」の項目から訴求ポイントを探ります。
先に結論を言うと、「海外での仕事と新規事業に興味があることをアピール」します。
順を追って説明すると、対処すべき課題として記載してあるのは3つあります。
- 1つ目は「2015年~2017年。海外店舗黒字化と事業領域拡大の基盤づくり」
- 2つ目は「2018年~2020年。海外高速出店と成長軌道の確立」
- 3つ目は「2021年~2022年。グローバルチェーン確立に向けた経営基盤再構築」
このうち3つ目の項目は経営企画部とかそこらへんの部署がやると思うので、いったん置いておくとして、みなさんが会社の需要に対して狙いを定めるのは1つ目と2つ目の項目がよいと思います。
おそらく会社側としての危機感は
- ・「日本では無双出来たが、それだけだと将来が不安だ。海外進出しなければ。」
というものと
- ・「家具の仕事では無双出来たが、それだけだと将来が不安だ。何か既存のものを活かした新規事業をしなければ。」
というものだと思います。
なのでそういった意欲を持っている人材を積極的に欲しがっているのではないかと推測します。
そういう意味ではこの会社は
- ・「海外で仕事がしたい人」
- ・「一種のベンチャースピリッツを以て何か新しいことがやりたい人」
が向いているのかもしれません。
有価証券報告書で調べたことから使えそうなところを捻り出すとしたら、上記のようになると思います。
有価証券報告書だけでなく、企業の「IR情報」という投資家に向けて公表している情報には業績や今後の方針などをわかりやすくパワーポイントでまとめたものもあるので、興味を持たれた方はそちらも見てみると良いかもしれません。