
はじめに
この記事では「就活生=投資家」「就職=自分という資本を企業に投資する」と定義した上で、就活生に人気がありそうな上場企業を「有価証券報告書」という上場企業なら毎年提出しなければならない成績表に書かれている「数字」という客観的事実のみで見てみようとするものです。
なのでここに書かれていることは、あくまで企業に対する直感を補足するものないしは裏付けるものとして捉え、就活に役立ててもらいたいと思っています。
では就活人気企業として、ヤフージャパン(以下:ヤフー)を取り上げます。
目次
ヤフーはいったいどんな商売をしているのでしょうか?
最新の有価証券報告書から抜粋すると、3つの事業に分けることが出来ます。
- マーケティングソリューション
- 検索連動型広告やディスプレイ広告などの広告関連サービス
- コンシューマ
- 「ヤフオク!」「Yahoo!ショッピング」「ASKUL」「LOHACO」などのコマース関連サービス
「Yahoo!プレミアム」「Yahoo!BB」などの会員向けサービス
「Yahoo!不動産」などの情報掲載サービス
ブックオフ、一休 - その他
- YJキャピタル、ワイジェイFX、ワイジェイカード、ジャパンネット銀行
どんな仕事の種類があるのか
各セグメントの直近3年間の平均数値は以下になります。
※いつもは「セグメント毎の研究開発費・設備投資費」を記載していますが、ヤフーは「セグメント毎の研究開発費・設備投資費」を記載していないので、今回は省略します。

売上 順位
- 1位:コンシューマ
- 2位:マーケティングソリューション
- 3位:その他
利益 順位
- 1位:マーケティングソリューション
- 2位:コンシューマ
- 3位:その他
順位をまとめると以下のようになります。

セグメント 総合順位
- 1位:マーケティングソリューション・コンシューマ
- 2位:その他
売上こそ「コンシューマ」が全体の約半分を占めますが、営業利益となると「マーケティングソリューション」が全体の6割以上を占めるメイン事業であることがわかります。
利益貢献度は「マーケティングソリューション」の方が明らかに高いですが、売上規模なども考えると総合的には「マーケティングソリューション」と「コンシューマ」はどちらも会社にとって同等に重要ということになっています。
次に従業員1人あたりの売上と利益について見てみましょう。

※売上/従業員数・利益/従業員数の単位は百万円
売上/従業員数 順位
- 1位:コンシューマ
- 2位:マーケティングソリューション
- 3位:その他
利益/従業員数 順位
- 1位:マーケティングソリューション
- 2位:コンシューマ
- 3位:その他
1人あたり利益/売上 順位
- 1位:マーケティングソリューション
- 2位:コンシューマ
- 3位:その他
順位をまとめると以下のようになります。

従業員1人あたり 総合順位
- 1位:マーケティングソリューション
- 2位:コンシューマ
- 3位:その他
(参考)
セグメント 総合順位
- 1位:マーケティングソリューション・コンシューマ
- 2位:その他
チーム力では割と拮抗していた「マーケティングソリューション」と「コンシューマ」ですが、個人技に関しては色んな面で「マーケティングソリューション」の方が上だということがわかります。
そして今まで目立ってこなかった「その他」ですが、各種貢献度の数字上のインパクトはほとんどないけれども、その利益率に目を向けると「コンシューマ」に引けを取らないことがわかります。
分野別の売上
普段は「地域別の売上」を記載している本項目ですが、そもそもヤフージャパンがアメリカ本国の「Yahoo!」の日本部門として始まったということもあり、基本的に日本でしか商売をしていません。
なので今回は決算書に載っていたサービスの分野別の売上について記載します。

※広告:検索連動広告やディスプレイ広告などの広告関連サービス
ビジネス:データセンター関連などの法人向けサービス、「Yahoo!不動産」「ASKUL」など
パーソナル:「ヤフオク!」「Yahoo!ショッピング」「Yahoo!プレミアム」「Yahoo!BB」「LOHACO」など
分野別 順位
ざっくりと分けると「広告」「ビジネス=BtoB事業」「パーソナル=BtoC事業」ということになるのでしょうが、BtoC事業の売上割合が一番低くて「広告」と「ビジネス」の2つを合わせたBtoB事業の割合が売上全体の7割以上を占めることから、どちらかと言えばこの会社はBtoB事業がメインの会社と言えるでしょう。
会社の安定性を測る指標
- A:流動比率&自己資本比率
- B:CF計算書
A:流動比率&自己資本比率

全然心配がいらない財務の健全さです。
自己資本比率がちょっとずつ下がってきていることは若干気になりますが、それでもまだ資本のバッファーは大量にあるような感じです。
B:CF計算書

※単位は百万円
純利益と営業CFがだいたい同じくらいということから、この会社の利益は見た目通りに見て置けば良いようです。
そして投資CFと財務CFに目を向けると、直近ではこの会社は割と投資に対して積極的なように思えます。
会社の成長性を測る指標

※単位は百万円
事業規模こそかなりのスピードで拡大していってはいるものの、純利益と営業CFはそれに追いついていないことから、純粋に成長していっているとは言い難い状態です。
投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い
- A:ROE(自己資本利益率)
- B:FCF(フリーキャッシュフロー)
- C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移
A:ROE(自己資本利益率)
ROE、つまり「投資家から預かったお金を使っていかに効率良く利益を出しているか」という観点で企業をチェックする場合、全世界的に見て
- 5%未満=最悪
- 5%=微妙に悪い
- 10%=普通
- 15%=まあまあ良い
- 20%以上=素晴らしい
となります。
ではROEの直近3年間の推移を見てみましょう。

お金の使い方は中々に良いようです。
特に自己資本比率が70%近いことを考えると、このROEの水準はかなり高いということになります。
B:FCF(フリーキャッシュフロー)

※営業CF・実質設備投資・ネットFCFの単位は百万円
2016年度はけっこうお金を使ったものの、毎年の営業CFのうち半分くらいのお金を自由資金として残せているようです。
経営は割と健全なように思えます。
C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

※単位は百万円
この会社にとって不況とはあってないようなもののようです。
全く動じていないことが数字からわかるだけでなく、むしろ「近年最大の大不況」の中でキッチリと増収増益していることに関しては驚異的と言えます。
まとめ
これまでヤフージャパンを数字で見てきたことをまとめると、
- ・メイン事業は「マーケティングソリューション」と「コンシューマ」
- ・個人技は「マーケティングソリューション」がかなり強い
- ・「その他」は事業規模は小さいが、利益率で「コンシューマ」に引けを取らない
- ・主な仕事はBtoB
- ・財務は非常に健全
- ・近年は投資に対して積極的な傾向が見られる
- ・事業規模は拡大傾向だか、中身は追いついていない
- ・お金の使い方はかなり上手い
- ・不況耐性はかなり強い
ということになるでしょう。
ES・面接での想定訴求ポイント
ここでは有価証券報告書で調べてきたことを実際のESや面接でどうやって活かしていけるか、という点に絞って想定される訴求ポイントを挙げます。
つまるところ名実ともに「超優良企業」であること
「高い営業利益率」「拡大傾向にある事業規模」「非常に健全な財務体質」「強靭な不況耐性」など項目を挙げれば挙げるほど、この会社は「超優良企業」であるということがわかります。
IT企業で事業規模が拡大傾向でオマケにCEOが「爆速経営」とか言っているので、とかく伸びる時は伸びるけど状況によっては不安定な会社に見られるかもしれませんが、数字を見てきてわかる通り実際はかなりの安定感を誇る堅実な会社です。
なので「とにかく安定した会社で働きたい」と考えている人にとっては打ってつけの会社だと思います。
敢えて「その他事業」に携わりたいことをアピールする
現状では超優良企業のヤフーですが、広告分野においてはグーグルという超強力な競合の存在はもちろんのこと、パーソナル分野ではメルカリやその他新興勢力が台頭してきており、絶対安心とは言い切れません。
ヤフーも現状維持だけやっていればいいとは考えていないはずなので、何か業績の柱になる事業を模索していると推測します。
そしてその種は「その他事業」にあると考えます。
なぜなら現状では売上貢献度と利益貢献度は小さいながらも、その利益率は現状第2の柱である「コンシューマ事業」に引けを取らないからです。
そして「その他事業」はいま何をやっているかと言うと、YJキャピタル、ワイジェイFX、ワイジェイカード、ジャパンネット銀行などの「金融事業」です。
なのでESや面接で「その他事業=金融事業に携わりたいこと」をアピールすることで、会社側の需要に応えるだけでなく競合就活生との差別化になるのではないかと考えます。
もちろん何か事業プランがあったり、「新規事業の立ち上げから軌道に乗るまでのプロセスに携わりたい」という人ならばそういったことをアピールするのも良いとは思うのですが、会社的には既に利益が出ることが証明されているのだからいまある「その他事業=金融事業」を伸ばす、という行動の方が可能性として高いと思います。
有価証券報告書で調べたことから使えそうなところを捻り出すとしたら、上記のようになると思います。
有価証券報告書だけでなく、企業の「IR情報」という投資家に向けて公表している情報には業績や今後の方針などをわかりやすくパワーポイントでまとめたものもあるので、興味を持たれた方はそちらも見てみると良いかもしれません。