ここでは日本の大手印刷会社の
- ・凸版印刷(以下:凸版)
- ・大日本印刷(以下:DNP)
の2社を有価証券報告書に記載されている事柄から比較することで、イメージではなくその企業ひいてはその業界の「事実」の確認が出来ればと思っています。
目次
主要子会社・関連会社の比較
事業規模の比較(単位:百万円)
売上 順位
- 1位:凸版
- 2位:DNP
純利益 順位
- 1位:凸版
- 2位:DNP
売上は2社で同じくらいですが、純利益に目を移すと凸版の圧勝です。
明らかに利益効率が違うことがわかります。
安全性の比較
流動比率 順位
- 1位:凸版
- 2位:DNP
自己資本比率 順位
- 1位:DNP
- 2位:凸版
流動比率は凸版の勝ちですが、自己資本比率においては僅差でDNPが勝っています。
とは言え財務の健全性においては2社の間にそこまでの差はなさそうです。
利益性の比較
純利益率 順位
- 1位:凸版
- 2位:DNP
最新年度では純利益率に明らかな差がありましたが、3年平均で見るとそこまでの差がないことがわかります。
とは言え凸版がリードしているのは変わらずです。
ネットFCF 順位
- 1位:凸版
- 2位:DNP
ただネットFCFでは明らかな差がついており、凸版はDNPの3倍以上の自由資金を手元に残せているようです。
実質設備投資/営業CF 順位
- 1位:凸版
- 2位:DNP
ネットFCFの差は設備投資の効率性も一因のようです。
DNPは稼ぎ出した営業CFのうちほとんどを設備投資で使ってしまっています。
在庫回転率 順位
- 1位:凸版
- 2位:DNP
在庫回転率も凸版の勝ちです。DNPの1.5倍の在庫を回しているようです。
コスト&研究開発費の比較
販管費/売上 順位
- 1位:凸版
- 2位:DNP
販管費はそこまで差がないようです。
研究開発費/売上 順位
- 1位:凸版
- 2位:DNP
研究開発費は凸版よりDNPの方が多く計上されています。
売上高がだいたい同じくらいということを考えると研究開発予算はDNPは凸版の約2倍くらいあるということになります。
従業員1人あたりの売上&利益の比較
売上/従業員(単位:百万円) 順位
- 1位:DNP
- 2位:凸版
ここまで見てきた数値では凸版の圧勝ムードでしたが、個人技の売上においてはDNPの方が強いようです。
営業利益/従業員(単位:百万円) 順位
- 1位:DNP
- 2位:凸版
そして営業利益でも僅差ではありますがDNPが凸版に勝っています。
どうやら投下人員数の影響でチーム力に差がついているようです。
1人あたり営業利益/売上 順位
- 1位:凸版
- 2位:DNP
営業利益率は凸版の方が優秀です。
ただDNPとの差はそこまで極端にはないので、個人技ベースでは概ね凸版よりもDNPの方が優れているということになりそうです。
事業セグメントの比較
凸版
※
- 情報コミュニケーション
- 証券類全般、通帳、ICカード、各種カード、ビジネスフォーム、データ・プリント・サービス、カタログ・パンフレット・チラシ・POP、各種プロモーションの企画・運営、週刊誌・月刊誌などの雑誌、単行本、辞書・事典、教科書出版、旅行代理店業務など
- 生活・産業
- 軟包装材、紙器、液体複合容器、、透明バリアフィルム、二次電池用関連部材、化粧シート、壁紙、床材、エクステリア商材、インキ製造など
- エレクトロニクス
- 液晶カラーフィルタ、反射防止フィルム、TFT液晶、フォトマスク、半導体パッケージ製品など
セグメントごとの売上と利益の比率は差がついていますが、営業利益率を見てみると3つのセグメントの営業利益率はそこまで差がないようです。
このことから実質的にセグメント間に格差はなく、事業ポートフォリオの構築はかなり上手く行っていることがわかります。
DNP
※
- 情報コミュニケーション
- 教科書、一般書籍、週間・月刊・季刊等の雑誌類、広告宣伝物、有価証券類、事務用帳票類、カード類、決済関連サービス、写真用資材、事務用機器及びシステム等の製造・販売、店舗及び広告宣伝媒体の企画、設計、施工、管理など
- 生活・産業
- 容器及び包装資材、包装用機器及びシステム、建築内外装資材、産業資材等の製造・販売
- エレクトロニクス
- 電子精密部品等の製造・販売
- 清涼飲料
- 北海道コカ・コーラボトリング(株)を中心として炭酸飲料、ミネラルウォーター等の製造・販売
売上では「情報コミュニケーション」「生活・産業」「エレクトロニクス」「清涼飲料」の順で並びますが、利益を見てみると「エレクトロニクス」の存在感が急激に増していることがわかります。
営業利益率においても「エレクトロニクス」以外のセグメントは同じくらいなのに対して「エレクトロニクス」だけ飛び抜けて高い営業利益率を記録しています。
ちなみに海外売上比率は以下の通りで、2社ともほぼ同じくらいです。
まとめ
これまで見てきた 社の順位を「利益性」「コスト」「安全性」「チーム力」「個人技」の括りで下記します。
※
各数値の偏差値を基準として順位を算出しています。偏差値の平均は50です。
※
平均以下の項目を赤字で示しています。
利益性 総合順位
- 1位:凸版(偏差値:60)
- 2位:DNP(偏差値:40)
個人技の項目ではDNPが勝っていますが、それ以外の項目は凸版の圧勝です。
コスト 総合順位
- 1位:凸版(偏差値:60)
- 2位:DNP(偏差値:40)
コスト効率においても凸版の圧勝で、DNPを全く寄せ付けません。
安全性 総合順位
- 1位:凸版(偏差値:50)
- 1位:DNP(偏差値:50)
財務の健全性は差がないようです。
チーム力 総合順位
- 1位:凸版(偏差値:60)
- 2位:DNP(偏差値:40)
ことチーム力に関してはやはり凸版の圧勝です。
個人技 総合順位
- 1位:DNP(偏差値:60)
- 2位:凸版(偏差値:40)
さきも確認しましたが、チーム力では凸版に及ばなくても個人技ではDNPの方が優れているようです。
総合順位
- 1位:凸版(偏差値:60)
- 2位:DNP(偏差値:40)
総合では個人技以外のほぼ全ての項目でDNPに勝ってきた凸版の圧勝です。
売上規模が同じくらいということを考えると、明らかに会社としてのクオリティは凸版の方が高いということになりそうです。
各社の特徴をまとめると以下のようになります。
- 強み:利益性・コスト効率・チーム力
- 弱み:個人技
- 強み:個人技
- 弱み:利益性・コスト効率・チーム力
志望動機として使えそうな点
凸版
総合的に優れた印刷会社である点
チーム力の高さ、コスト効率の良さ及び総合的な利益性の高さという観点で、この会社はライバルのDNPよりも会社としてのクオリティが高いということを確認してきました。
なので「最大手かつ優良企業で働きたい」と考えている人に向いていると思います。
DNP
個人技においては凸版よりも優れている点
チーム力を始めとした会社の総合的なクオリティでは凸版に遠く及ばないこの会社ですが、こと個人技においては凸版よりも優れており、凸版と投下人員数を同じにすればチーム力は凸版を超えるポテンシャルを有していることを確認してきました。
なので「優秀な人材が多くいる環境で揉まれて成長していきたい」と考えている人に向いていると思います。
これまでまとめてきた事項は数字を元にした会社の実態ではありますが、より正確に実態を掴むためにも説明会で質問してみたり実際に社員の人に会ったりして、調べた情報とズレていないかどうかを確認してみた上で、ESや面接で使用することをおすすめします。