はじめに
この記事では「就活生=投資家」「就職=自分という資本を企業に投資する」と定義した上で、就活生に人気がありそうな上場企業を「有価証券報告書」という上場企業なら毎年提出しなければならない成績表に書かれている「数字」という客観的事実のみで見てみようとするものです。
なのでここに書かれていることは、あくまで企業に対する直感を補足するものないしは裏付けるものとして捉え、就活に役立ててもらいたいと思っています。
では就活人気企業として、ブリヂストンを取り上げます。
目次
ブリヂストンはいったいどんな商売をしているのでしょうか?
最新の有価証券報告書から抜粋すると、2つの事業に分けることが出来ます。
- 「タイヤ」
- タイヤ・チューブの製造及び販売、タイヤ関連用品の販売、リトレッド材料の製造及び販売・関連技術の供与、自動車整備・補修
- 「多角化」
- 化工品、BSAM多角化、スポーツ用品、自転車、その他各種事業(ファイナンスなど)
どんな仕事の種類があるのか
各セグメントの直近3年間の平均数値は以下になります。
売上 順位
- 1位:タイヤ
- 2位:多角化
利益 順位
- 1位:タイヤ
- 2位:多角化
研究開発費 順位(少ない順)
- 1位:多角化
- 2位:タイヤ
設備投資額 順位(少ない順)
- 1位:多角化
- 2位:タイヤ
順位をまとめると以下のようになります。
※
下位項目を赤字で示しています。
※
偏差値を併記しておきます。偏差値の平均は50です。
セグメント 総合順位
- 1位:タイヤ(偏差値:50)
- 1位:多角化(偏差値:50)
売上及び利益の貢献度は「タイヤ」が圧倒的なのですが、それ相応に研究開発費と設備投資費もかけているという点で偏差値的には2事業は同じくらいのクオリティということになっています。
次に従業員1人あたりの売上と利益について見てみましょう。
※売上/従業員数・利益/従業員数の単位は百万円
売上/従業員数 順位
- 1位:多角化
- 2位:タイヤ
利益/従業員数 順位
- 1位:タイヤ
- 2位:多角化
1人あたり利益/売上 順位
- 1位:タイヤ
- 2位:多角化
順位をまとめると以下のようになります。
※
下位項目を赤字で示しています。
※
偏差値を併記しておきます。偏差値の平均は50です。
従業員1人あたり 総合順位
- 1位:タイヤ(偏差値:53)
- 2位:多角化(偏差値:47)
(参考)
セグメント 総合順位
- 1位:タイヤ(偏差値:50)
- 1位:多角化(偏差値:50)
個人技においての売上では意外にも「多角化」の方が優れているようですが、利益と利益率に目を移すと結局「タイヤ」の方が優れています。
特に利益率に関しては「タイヤ」は「多角化」の2倍以上の効率性を誇る優良事業のようです。
どこの国で仕事をしているのか
地域別 順位
- 1位:米州
- 2位:日本
- 3位:欧州・ロシア・中近東・アフリカ・中国・アジア大洋州
海外売上比率が80%以上なのでまごうことなきグローバル企業です。
そしてこの会社の主戦場は米州のようです。
会社の安定性を測る指標
- A:流動比率&自己資本比率
- B:CF計算書
A:流動比率&自己資本比率
どちらの数値も良好なので、財務の健全性は高いと言えます。
B:CF計算書
※単位は百万円
特に言うことのないキレイなCF計算書なので、これと言った問題なく堅実な経営をしているようです。
会社の成長性を測る指標
※単位は百万円
売上と純利益に関しては直近3年間でほとんど変わっていないことから成長しているとは言い難い状況です。
営業CFが漸減しているのが少し気になります。
投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い
- A:ROE(自己資本利益率)
- B:FCF(フリーキャッシュフロー)
- C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移
A:ROE(自己資本利益率)
ROE、つまり「投資家から預かったお金を使っていかに効率良く利益を出しているか」という観点で企業をチェックする場合、全世界的に見て
- 5%未満=最悪
- 5%=微妙に悪い
- 10%=普通
- 15%=まあまあ良い
- 20%以上=素晴らしい
となります。
ではROEの直近3年間の推移を見てみましょう。
お金の使い方は「普通~まあまあ良い」の中間くらいに位置するので、それなりに上手い部類に入ると思います。
B:FCF(フリーキャッシュフロー)
※営業CF・実質設備投資・ネットFCFの単位は百万円
こちらもまたキレイに毎年営業CFのうちの約45%を設備投資に充てているようです。
普通の企業くらいに設備投資費はかかっているといった印象です。
C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移
※単位は百万円
赤字には転落していませんが業績がデコボコしていることから、景気の影響は受けるには受けるようです。
ただいずれにせよ営業CFには分厚いバッファーがあるので会社的にはそこまで問題なさそうです。
まとめ
これまでブリヂストンを数字で見てきたことをまとめると、
- ・「タイヤ事業」が主軸
- ・海外売上比率が80%を超えており、中でも米州が主戦場
- ・財務基盤はかなり健全
- ・経営は堅実
- ・直近3年間では成長性は見られない
- ・お金の使い方はそこそこ上手い
- ・景気の影響は受けるには受けるがあまり深刻なダメージは受けなさそう
ということになるでしょう。
ES・面接での想定訴求ポイント
ここでは有価証券報告書で調べてきたことを実際のESや面接でどうやって活かしていけるか、という点に絞って想定される訴求ポイントを挙げます。
海外事業に携わりたいことをアピールする
海外売上比率が80%を超えていることから、この会社に入社したら海外事業に携わる機会はかなり多いと推測します。
なので「海外事業に携わりたい」という人にとっては確率的にかなり良い環境であると同時に会社側に需要にも応えることが出来るのでESや面接ではそういったことをアピールするのが良いと思います。
逆に「日本以外では働きたくない」という人にとってはあまりよろしくない環境かもしれません。
健全で堅実な優良企業であること
この会社は「本業でちゃんと稼げている」「財務が健全」「経営が堅実」「お金の使い方が上手い」「米州に偏っているものの、地政学リスクは割と分散されている」といったようにいわゆる「優良企業」に当てはまる要素が目白押しです。
なので「優良企業で安定して働きたい」という人にとってはうってつけの環境だと思います。
ただ成長性はあまり無い感じなのでこの会社に求めるものは「派手さや成長性」ではなく、あくまで「安定感や堅実さ」の方が良いかと思われます。
有価証券報告書で調べたことから使えそうなところを捻り出すとしたら、上記のようになると思います。
有価証券報告書だけでなく、企業の「IR情報」という投資家に向けて公表している情報には業績や今後の方針などをわかりやすくパワーポイントでまとめたものもあるので、興味を持たれた方はそちらも見てみると良いかもしれません。