ここでは日本のインテリア大手の
- ・ニトリホールディングス(以下:ニトリ)
- ・良品計画(以下:無印)
- ・大塚家具(以下:大塚)
- ・島忠
の4社を有価証券報告書に記載されている事柄から比較することで、イメージではなくその企業ひいてはその業界の「事実」の確認が出来ればと思っています。
目次
主要子会社・関連会社の比較
特に有名な子会社・関連会社がないので今回は省略します。
事業規模の比較(単位:百万円)
売上 順位
- 1位:ニトリ
- 2位:無印
- 3位:島忠
- 4位:大塚
純利益 順位
- 1位:ニトリ
- 2位:無印
- 3位:島忠
- 4位:大塚
事業規模においてはニトリがこの業界では絶対王者であることがわかります。
無印も健闘していますがはるかに及ばず、売上においては1.5倍で純利益では2倍近くの差をつけられています。
安全性の比較
流動比率 順位
- 1位:大塚
- 2位:無印
- 3位:ニトリ
- 4位:島忠
自己資本比率 順位
- 1位:島忠
- 2位:ニトリ
- 3位:大塚
- 4位:無印
概ね各社財務はかなり健全なのですが、短期の資金繰りという面においては大塚家具が異様に手元に現金を蓄えているようです。
なので大塚家具は業績は不調ですが資金繰りにおいては十分に対処出来そうです。
利益性の比較
純利益率 順位
- 1位:ニトリ
- 2位:無印
- 3位:島忠
- 4位:大塚
ニトリと無印の2強といったイメージです。
ネットFCF 順位
- 1位:ニトリ
- 2位:無印
- 3位:島忠
- 4位:大塚
FCFはニトリの一人勝ちで他社と比べて文字通り桁違いの自由資金を手元に残せています。
大塚家具は完全に持ち出しのようです。
実質設備投資/営業CF 順位
- 1位:ニトリ
- 2位:島忠
- 3位:無印
- 4位:大塚
概ね50~60%くらいのようですが、大塚家具が異常にお金を使い過ぎています。
在庫回転率 順位
- 1位:ニトリ
- 2位:島忠
- 3位:無印
- 4位:大塚
この分野ではニトリと島忠の2強といった感じです。
なんとなくですが順位が下がるにつれて販売している商品単価は逆に上がっていっているように思えます。
コスト&研究開発費の比較
販管費/売上 順位
- 1位:島忠
- 2位:ニトリ
- 3位:無印
- 4位:大塚
頭一つ抜けて販管費がかかっていない島忠と、頭一つ抜けて販管費がかかっている大塚家具が目立ちます。
研究開発費/売上 順位
- 1位:ニトリ・大塚・島忠
- 2位:無印
無印以外は研究開発費を計上していないので比較するのもアレなのですが、いちおう記載しておきます。
従業員1人あたりの売上&利益の比較
売上/従業員(単位:百万円) 順位
- 1位:島忠
- 2位:無印
- 3位:ニトリ
- 4位:大塚
営業利益/従業員(単位:百万円) 順位
- 1位:島忠
- 2位:ニトリ
- 3位:無印
- 4位:大塚
1人あたり営業利益/売上 順位
- 1位:島忠
- 2位:ニトリ
- 3位:無印
- 4位:大塚
チーム力ではニトリの後塵を拝していた印象の島忠ですが、個人技となると圧倒的な強さを発揮します。
各3分野で2位と少なくとも2倍の差をつけて圧勝しています。
ニトリと無印の個人技はだいたい同じレベルのようです。
事業セグメントの比較
ニトリ
※
この会社は「セグメント売上」の記載しかなかったので「セグメント利益」と「セグメント利益/売上」は省略します。
特にこれといったコメントはありませんが、世間一般のイメージ通りではないでしょうか。
無印
この会社は地域ごとでセグメント分けされていたのでそれを記載しますが、売上においては大方のイメージ通りに「日本」がメインなのですが、利益を見てみると「日本」と「東アジア」でだいたい半分ずつ稼いでいるようです。
利益率を見ると「東アジア」の圧倒的な効率性がわかります。
逆に「欧米」と「西南アジア・オセアニア」は苦戦しているようです。
大塚
この会社も単一セグメントなのですが、見ての通りの赤字です。
しかもここでの利益は「純利益」ではなくて「営業利益」なので本業で大苦戦していることがわかります。
島忠
売上を見てみても利益を見てみてもこの会社は「家具の会社」というよりは「ホームセンター用品の会社」ということがわかります。
ただ利益率は「ホームセンター用品」よりも「家具・ホームファッション」の方が高いです。
というか「ホームセンター用品」の「営業利益率:28.7%」ですら異常に高い営業利益率なのですが、「家具・ホームファッション」の「営業利益率:43.1%」は異常を通り越して異次元の超高営業利益率です。
どうしたらこんな滅茶苦茶に効率が良い商売が出来るのか全く想像がつきません。
いちおう各社の海外売上比率も見てみましょう。
無印だけが海外展開に成功していて、他の3社は依然としてかなりドメスティックな会社であることがわかります。
まとめ
これまで見てきた 社の順位を「利益性」「コスト」「安全性」「チーム力」「個人技」の括りで下記します。
※
総合点と平均が低ければ低いほど各項目について「優れている」ということになります。
※
ご参考までに偏差値も併記しておきます。偏差値の平均は50です。
利益性 総合順位
- 1位:ニトリ(偏差値:61)
- 2位:無印(偏差値:53)
- 2位:島忠(偏差値:53)
- 3位:大塚(偏差値:34)
ニトリの一人勝ちです。
無印と島忠は平均よりも利益性が高いようです。
なお大塚家具はボロボロです。
コスト 総合順位
- 1位:ニトリ(偏差値:60)
- 1位:島忠(偏差値:60)
- 2位:無印(偏差値:42)
- 3位:大塚(偏差値:38)
ニトリと島忠が同率1位フィニッシュです。
無印はコスト面では平均よりも割と劣後するようです。
安全性 総合順位
- 1位:大塚(偏差値:64)
- 2位:ニトリ(偏差値:50)
- 2位:島忠(偏差値:50)
- 3位:無印(偏差値:36)
財務の健全性では大塚家具が飛び抜けて良いことがわかります。
ニトリと島忠は平均くらいで、無印は4社の中では相対的にかなり劣っているようです。
チーム力 総合順位
- 1位:ニトリ(偏差値:63)
- 2位:無印(偏差値:54)
- 3位:島忠(偏差値:46)
- 4位:大塚(偏差値:37)
利益性の項目でも見た通りニトリの圧勝です。
無印は平均よりも少し上くらいで、逆に島忠は平均よりも劣るようです。
個人技 総合順位
- 1位:島忠(偏差値:64)
- 2位:ニトリ(偏差値:52)
- 3位:無印(偏差値:48)
- 4位:大塚(偏差値:36)
チーム力では平均以下だった島忠ですが、個人技では他の追随を全く許さずに1位です。
ニトリはチーム力では圧倒的だったのですが、個人技は平均的なようです。
※
下位の項目を赤字で示しています
総合順位
- 1位:ニトリ(偏差値:62)
- 2位:島忠(偏差値:55)
- 3位:無印(偏差値:49)
- 4位:大塚(偏差値:34)
流動比率の相対的な少なさと売上における個人技の相対的な弱さ以外はこれといった弱点がなく、ニトリが安定して1位です。
島忠は利益性の項目においてはあまり目立ちませんでしたが、個人技の強さとコスト効率の良さで挽回して2位となっています。
そして無印は各項目にそれほどバラツキはないのですが、これといった強みがそこまでないことが響いて3位という結果になっています。
大塚家具は言わずもがなで、流動比率の異常な高さ以外は4社の中でボロボロです。
各社の特徴をまとめると以下のようになります。
ニトリ
- 利益性:1位(偏差値:61)
- コスト:1位(偏差値:60)
- 安全性:2位(偏差値:50)
- チーム力:1位(偏差値:63)
- 個人技:2位(偏差値:52)
- 総合:1位(偏差値:62)
- 強み:事業規模の大きさ、チーム力の強さ
- 弱み:個人技がそこまで強くないこと
無印
- 利益性:2位(偏差値:53)
- コスト:2位(偏差値:42)
- 安全性:3位(偏差値:36)
- チーム力:2位(偏差値:54)
- 個人技:3位(偏差値:48)
- 総合:3位(偏差値:49)
- 強み:全体的な安定感、海外展開の成功
- 弱み:財務の健全性の相対的な弱さ
大塚
- 利益性:3位(偏差値:34)
- コスト:3位(偏差値:38)
- 安全性:1位(偏差値:64)
- チーム力:4位(偏差値:37)
- 個人技:4位(偏差値:36)
- 総合:4位(偏差値:34)
- 強み:超健全な財務基盤
- 弱み:本業が上手く行っていないこと
島忠
- 利益性:2位(偏差値:53)
- コスト:1位(偏差値:60)
- 安全性:2位(偏差値:50)
- チーム力:3位(偏差値:46)
- 個人技:1位(偏差値:64)
- 総合:2位(偏差値:55)
- 強み:コスト効率の良さ、個人技の圧倒的な強さ
- 弱み:平均的なチーム力
志望動機として使えそうな点
ニトリ
業界最大手かつ超優良企業である点
「最大手の看板を背負って働きたい」という人や「優良企業で働きたい」という人にとってはこの会社以上の会社は同じ業界内にはありません。
なので上記のような人たちにとっては国内の会社では他に選択肢はないと思います。
無印
海外展開に成功している点
主にアジア圏ではありますがこの会社は他の3社と比べて海外展開に成功しています。
なので「海外で働きたい」という人にとっては会社側の需要の観点からも打って付けなのではないかと思います。
大塚
本業は上手く行っていないが、財務基盤は充実している点
見ての通り現状赤字のこの会社ですが、「充実した財務基盤」という本業の立て直しに必要不可欠な武器はあります。
なのでこの会社に向いている人はある種の「チャレンジ精神」や「ベンチャースピリット」を持ち、「自分の活躍で苦境の会社を立て直す!」という気概を持った人にとってはまさに打って付けの会社だと思います。
ただ最新の決算書の財務情報と損益の状況から鑑みるに、立て直しの猶予はおそらくあと3~5年くらいなので「とにかくバリバリ働いて、短期間の間に目に見える成果を出したい」という人の方が良いと思います。
島忠
目立たないが、かなりの優良企業である点
業績的にはニトリの陰に、世間のイメージ的には無印の陰に隠れてあまり目立ちませんが、数字を追っていく中でかなりの優良企業であることがわかってきました。
事業規模では無印に及びませんが、少なくとも総合的な会社のクオリティは無印よりも上だと思います。
なので「優良企業で働きたい」という人にとってはかなりの穴場になるのではないでしょうか。
これまでまとめてきた事項は数字を元にした会社の実態ではありますが、より正確に実態を掴むためにも説明会で質問してみたり実際に社員の人に会ったりして、調べた情報とズレていないかどうかを確認してみた上で、ESや面接で使用することをおすすめします。