アイコン:目次目次

もくじをタップするとページ内を移動します

企業の実態を丸裸!~有価証券報告書を使った企業研究~ 「凸版印刷編」

※本サイトでは、プロモーションが含まれている場合があります。
印刷業界
2018年06月19日
クレジットカード

はじめに

この記事では「就活生=投資家」「就職=自分という資本を企業に投資する」と定義した上で、就活生に人気がありそうな上場企業を「有価証券報告書」という上場企業なら毎年提出しなければならない成績表に書かれている「数字」という客観的事実のみで見てみようとするものです。

なのでここに書かれていることは、あくまで企業に対する直感を補足するものないしは裏付けるものとして捉え、就活に役立ててもらいたいと思っています。

では就活人気企業として、凸版印刷(以下:凸版)を取り上げます。

目次

  1. どんな仕事の種類があるのか
  2. どこの国で仕事をしているのか
  3. 会社の安定性を測る指標
  4. 会社の成長性を測る指標
  5. 投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い
  6. まとめ
  7. ES・面接での想定訴求ポイント

凸版はいったいどんな商売をしているのでしょうか?

最新の有価証券報告書から抜粋すると、つの事業に分けることが出来ます。

情報コミュニケーション

セキュア関連
証券類全般、通帳、ICカードなど
マーケティング関連
カタログ、パンフレットなど
コンテンツ関連
雑誌、単行本など
その他
教科書出版、旅行代理店業務など

生活・産業

パッケージ関連
軟包装材、紙器、液体複合容器など
高機能
エネルギー関連・・・透明バリアフィルム、情報記録材など
建装材関連
化粧シート、壁紙、床材など
その他
インキ製造など

エレクトロニクス

ディスプレイ関連
液晶カラーフィルタ、反射防止フィルムなど
半導体関連
フォトマスク、半導体パッケージ製品など
スポンサーリンク就活の証明写真を撮るのにおすすめの写真館の選び方とまとめ
スポンサーリンク就活の証明写真を撮るのにおすすめの写真館の選び方とまとめ

どんな仕事の種類があるのか

各セグメントの直近3年間の平均数値は以下になります。

※研究開発費はセグメント別に情報開示していないので、今回は省略します。

表9

売上 順位

  • 1位:情報コミュニケーション
  • 2位:生活・産業
  • 3位:エレクトロニクス

利益 順位

  • 1位:情報コミュニケーション
  • 2位:生活・産業
  • 3位:エレクトロニクス

設備投資額 順位(少ない順)

  • 1位:エレクトロニクス
  • 2位:生活・産業
  • 3位:情報コミュニケーション

順位をまとめると以下のようになります。

表8

セグメント 総合順位

  • 1位:情報コミュニケーション
  • 2位:生活・産業
  • 3位:エレクトロニクス

売上と利益の貢献度を見るとどちらも「情報コミュニケーション」「生活・産業」「エレクトロニクス」の順でフィニッシュしておりセグメント毎にけっこうな差がついています。

しかし設備投資額を見てみると順位は逆転しているもののセグメント毎の差異はそこまで大きくはありません。

売上・利益の貢献度が圧倒的に高いにも関わらず、設備投資額はあんまりいらないという点でセグメントとして「情報コミュニケーション」がいかに優秀なのかがわかります。

次に従業員1人あたりの売上と利益について見てみましょう。

表6

※売上/従業員数・利益/従業員数の単位は百万円

売上/従業員数 順位

  • 1位:生活・産業
  • 2位:情報コミュニケーション
  • 3位:エレクトロニクス

利益/従業員数 順位

  • 1位:情報コミュニケーション
  • 2位:生活・産業
  • 3位:エレクトロニクス

1人あたり利益/売上 順位

  • 1位:情報コミュニケーション
  • 2位:生活・産業
  • 3位:エレクトロニクス

順位をまとめると以下のようになります。

表2

従業員1人あたり 総合順位

  • 1位:情報コミュニケーション
  • 2位:生活・産業
  • 3位:エレクトロニクス

(参考)

セグメント 総合順位

  • 1位:情報コミュニケーション
  • 2位:生活・産業
  • 3位:エレクトロニクス

「情報コミュニケーション」と「生活・産業」の2つはセグメント全体の貢献度での比較だとそれぞれにかなりの差がありましたが、従業員1人あたりに換算するとその差はけっこう縮まります。

要するにこの2つのセグメントの貢献度の差は人員配置の多寡の差であって、事業自体のクオリティは同じくらいということが見えてきます。

そして「エレクトロニクス」は利益は出してはいるものの、事業としては一番効率が悪いということがわかります。

どこの国で仕事をしているのか

表3

地域別 順位

  • 1位:日本
  • 2位:アジア
  • 3位:その他

数字を見る限りは思いっきりドメスティックな企業で、なおかつほとんどアジア圏でしか商売をしていないということがわかります。

そんなに欧米は競合が強いのか・・・。

会社の安定性を測る指標

  • A:流動比率&自己資本比率
  • B:CF計算書

A:流動比率&自己資本比率

表10

財務は割と健全で、何なら経年変化で見ると徐々に財務体質が改善しているようです。

B:CF計算書

表11

※単位は百万円

2015年は少しお金を使っている感はあるものの、概してキレイなCF計算書です。

特に営業CFが純利益の約3倍あるのでかなり余裕のある経営が出来ていそうです。

会社の成長性を測る指標

表12

※単位は百万円

ただ少し気になるのが事業規模が少し減衰気味なことです。

純利益こそデコボコしているものの、売上高と営業CFに関しては徐々に減っていっています。

投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い

  • A:ROE(自己資本利益率)
  • B:FCF(フリーキャッシュフロー)
  • C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

A:ROE(自己資本利益率)

ROE、つまり「投資家から預かったお金を使っていかに効率良く利益を出しているか」という観点で企業をチェックする場合、全世界的に見て

  • 5%未満=最悪
  • 5%=微妙に悪い
  • 10%=普通
  • 15%=まあまあ良い
  • 20%以上=素晴らしい

となります。

ではROEの直近3年間の推移を見てみましょう。

表7

一言で言うと「お金の使い方は下手くそ」です。

近年の「ROEを経営指標として重視する流れ」には全く興味がないようです。

B:FCF(フリーキャッシュフロー)

表1

※営業CF・実質設備投資・ネットFCFの単位は百万円

経営自体は堅実そのもので、毎年平均で506億円くらいの自由資金を残せているようです。

設備投資額が毎年平均で481億円くらいなので、自由資金の内々で出せてしまいます。

C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

表5

※単位は百万円

不況の影響を受けなくはないですが、そこまで大きくは影響されないようです。

特に営業CFは毎年1,000億円以上をキープしているため、経営はかなり安定しているものと思われます。

ここで2015~2017年度の同指標を再度見てみましょう。

表12

これを上記の2008~2010年度と比較すると、事業規模が徐々に縮小傾向だということが割とハッキリとわかります。

まとめ

これまで凸版を数字で見てきたことをまとめると、

  • ・メイン事業は「情報コミュニケーション」だが、事業のクオリティは「生活・産業」も同じくらいの水準
  • ・日本を中心としたアジア圏でしかほとんど事業を展開していない
  • ・財務は健全で、ここ数年で徐々にマッチョになってきている
  • ・経営は堅実
  • ・お金の使い方は「下手くそ」
  • ・事業規模は少しずつだが縮小傾向にある
  • ・不況耐性は割とある

ということになるでしょう。

ES・面接での想定訴求ポイント

ここでは有価証券報告書で調べてきたことを実際のESや面接でどうやって活かしていけるか、という点に絞って想定される訴求ポイントを挙げます。

「生活・産業」の仕事に携わりたいことをアピールする

現行のメイン事業は各種貢献度から見ても圧倒的に「情報コミュニケーション」なのですが、単純に考えると競合就活生がこのセグメントに携わりたいことをアピールしてくる確率は高いと想定されます。

そこで差別化のために敢えて「生活・産業」の仕事に携わりたいことをアピールするのが良いのではないかと考えます。

「生活・産業」を推すメリットは差別化だけでなく、会社側の需要にもマッチ出来ることです。

それは「生活・産業」は各種貢献度こそ「情報コミュニケーション」に現時点で劣るものの、実は事業のクオリティは同程度なので会社にとって重要な事業だからです。

海外事業に携わりたいことをアピールする

ポイントは「海外事業に携わって活躍することにより、会社全体の成長を後押しすること」です。

現在売上の85%を日本に依存しているこの会社ですが、データで経年変化を見ていくと日本での商売はすでに頭打ちが来ていることが推測されます。

おそらく会社側の認識としては「成長のためには海外展開が必要」ということだと思うので、そこにマッチさせに行きます。

「事業規模が成長していないこと」は今は株主からギャーギャー言われている雰囲気はありませんが、遅かれ早かれ「ROEの低さ」と「大量の内部留保」と合わせて指摘される可能性が高いと想定されます。

なので会社側としてもうるさく言われる前に、そして手元に大量の内部留保(≒自由に使えるお金)がある内に会社の成長に向けての一手を打っておきたいと思うので、非常にわかりやすい成長の手段として「まだあまり手を付けていない、海外展開」を使ってくるのではないかと考えます。

有価証券報告書で調べたことから使えそうなところを捻り出すとしたら、上記のようになると思います。

有価証券報告書だけでなく、企業の「IR情報」という投資家に向けて公表している情報には業績や今後の方針などをわかりやすくパワーポイントでまとめたものもあるので、興味を持たれた方はそちらも見てみると良いかもしれません。