はじめに
この記事では「就活生=投資家」「就職=自分という資本を企業に投資する」と定義した上で、就活生に人気がありそうな上場企業を「有価証券報告書」という上場企業なら毎年提出しなければならない成績表に書かれている「数字」という客観的事実のみで見てみようとするものです。
なのでここに書かれていることは、あくまで企業に対する直感を補足するものないしは裏付けるものとして捉え、就活に役立ててもらいたいと思っています。
では就活人気企業として、ZOZOTOWNの運営会社であるスタートトゥデイを取り上げます。
※スタートトゥデイは単一セグメントのため、「①どんな仕事の種類があるのか」で普段記載しているセグメント別比較は今回は大幅に省略します。
目次
スタートトゥデイは有価証券報告書によると「EC事業」のみの単一セグメントのようです。
EC事業
- ①ZOZOTOWN事業
- 受託ショップ、買取ショップ、ZOZOUSED
- ②BtoB事業
- アパレルメーカーが独自に運営するECサイトのシステム開発、デザイン制作、物流請負、マーケティング支援など
- ③その他
- ZOZOTOWN事業に付随した事業(有料会員収入、送料収入、決済手数料収入等)
①どんな仕事の種類があるのか?
単一セグメントのためセグメント別比較は出来ませんが、従業員1人あたりの各数値だけ確認しておきましょう。
※売上/従業員数・利益/従業員数の単位は百万円
売上は1人あたり約9,000万円で、営業利益も1人あたり3,000万円稼ぎ出している計算になります。
そしてその営業利益率は驚異の30%超えです。
普通は営業利益率が20%を超えていたらかなり稼ぐ力が強い企業と見做しても良いのですが、この会社の場合はその更に上を行く力を持っているということになっています。
ちなみに業態は少し違いますが、同じ小売業に分類されるファーストリテイリング(ユニクロ)の同期間の営業利益率は平均してだいたい10%前後です。
②どこの国で仕事をしているのか
地域別 順位
- 1位:日本
- 2位:海外
思いっきりドメスティックな会社であることがわかります。
なお海外展開を現段階でそもそも考えていないのか、それともあまり上手く行っていないのかは不明です。
③会社の安定性を測る指標
- A:流動比率&自己資本比率
- B:CF計算書
A:流動比率&自己資本比率
しっかりと流動比率100%以上&自己資本比率50%以上をキープ出来ているので財務基盤はけっこう健全だと言えるでしょう。
B:CF計算書
※単位は百万円
純利益と営業CFの差はあまりないので見た目通りに稼いでいるようです。
そして投資CFも抑えてあり、なおかつ財務CFもしっかりと返したり還元したりするものはしているようです。
そういう意味ではかなり堅実な経営をしている会社と言えます。
④会社の成長性を測る指標
※単位は百万円
売上高・純利益・営業CF全てがキレイに増加していっているところを見ると成長軌道に乗っているようです。
純利益率は2018年度に下がってはいるものの、それまでとそこまでの差はないため事業の質を落とさずに成長していることがわかります。
⑤投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い
- A:ROE(自己資本利益率)
- B:FCF(フリーキャッシュフロー)
- C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移
A:ROE(自己資本利益率)
ROE、つまり「投資家から預かったお金を使っていかに効率良く利益を出しているか」という観点で企業をチェックする場合、全世界的に見て
- 5%未満=最悪
- 5%=微妙に悪い
- 10%=普通
- 15%=まあまあ良い
- 20%以上=素晴らしい
となります。
ではROEの直近3年間の推移を見てみましょう。
自己資本比率50%以上でROEが約50%あるのは良い意味で異常です。
ムチャクチャにお金の使い方が上手い、何ならば日本企業の中でもトップクラスにお金の使い方が上手いと思います。
こんな会社は中々お目にかかれません。
B:FCF(フリーキャッシュフロー)
※営業CF・実質設備投資・ネットFCFの単位は百万円
毎年100億円以上の自由資金を残せていることがわかります。
そして設備投資比率に関しても2018年度のみ割と使っていますが、基本的には事業維持にお金がほとんどかからない、物凄く効率の良い事業を営んでいるようです。
C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移
※単位は百万円
純利益率は若干減少傾向ですが、売上高も純利益もしっかりと増加し続けています。
なので景気の影響はあまり受けなさそうです。
それよりも今の純利益率をこの当時と比較してみると、今の方が事業効率が格段に良くなっていることがわかります。
⑥まとめ
これまでスタートトゥデイを数字で見てきたことをまとめると、
- ・営業利益率はかなり高い
- ・海外展開はほとんどしていない
- ・財務基盤は健全
- ・経営はかなり堅実そう
- ・成長軌道に乗っている
- ・非常に効率の良い事業を営んでいる
- ・お金の使い方は日本企業の中でもトップクラスに上手い
- ・景気の影響はあまり受けなさそう
ということになるでしょう。
⑦ES・面接での想定訴求ポイント
ここでは有価証券報告書で調べてきたことを実際のESや面接でどうやって活かしていけるか、という点に絞って想定される訴求ポイントを挙げます。
兎にも角にも日本企業の中でトップレベルの超優良企業である点
前澤社長のキャラクターやゴシップが取り沙汰されがちなこの会社ですが、世間のイメージとは裏腹に前澤社長はこの超優良企業を築いたということで超有能であると言うことが出来ます。
現在はZOZOSUITやプライベートブランドに力を入れているようなので、現状に満足せずに更なる収益機会も模索しているという充実っぷりも見せています。
そういう意味では「優良企業で安心して働きたい」という人にとっては現状これ以上ない会社なのですが、圧倒的な効率性から生み出される豊富な自由資金を活かして「新規事業に携わってみたい」という人にとっても良い環境なのではないかと思います。
有価証券報告書で調べたことから使えそうなところを捻り出すとしたら、上記のようになると思います。
有価証券報告書だけでなく、企業の「IR情報」という投資家に向けて公表している情報には業績や今後の方針などをわかりやすくパワーポイントでまとめたものもあるので、興味を持たれた方はそちらも見てみると良いかもしれません。