はじめに
この記事では「就活生=投資家」「就職=自分という資本を企業に投資する」と定義した上で、就活生に人気がありそうな上場企業を「有価証券報告書」という上場企業なら毎年提出しなければならない成績表に書かれている「数字」という客観的事実のみで見てみようとするものです。
なのでここに書かれていることは、あくまで企業に対する直感を補足するものないしは裏付けるものとして捉え、就活に役立ててもらいたいと思っています。
では就活人気企業として、JTを取り上げます。
目次
JTはいったいどんな商売をしているのでしょうか?
最新の有価証券報告書から抜粋すると5つの事業に分けることが出来ます。
- 国内たばこ
- 日本でのたばこの製造・販売
- 海外たばこ
- 海外でのたばこの製造・販売
- 医薬
- 医療用医薬品の研究開発・製造・販売
- 加工食品
- 冷凍・常温加工食品、ベーカリー、調味料等の製造・販売
- その他
- 不動産賃貸など
どんな仕事の種類があるのか
各セグメントの直近3年間の平均数値は以下になります。
売上 順位
- 1位:海外たばこ
- 2位:国内たばこ
- 3位:加工食品
- 4位:医薬
- 5位:その他
利益 順位
- 1位:海外たばこ
- 2位:国内たばこ
- 3位:医薬
- 4位:加工食品
- 5位:その他
研究開発費 順位(少ない順)
※その他は研究開発費を計上していないので順位に含めていません
- 1位:加工食品
- 2位:海外たばこ
- 3位:国内たばこ
- 4位:医薬
設備投資額 順位(少ない順)
※その他は設備投資費を計上していないので順位に含めていません
- 1位:医薬
- 2位:加工食品
- 3位:国内たばこ
- 4位:海外たばこ
順位をまとめると以下のようになります。
セグメント 総合順位
- 1位:海外たばこ
- 2位:国内たばこ・加工食品
- 3位:医薬
- 4位:その他
売上貢献度と利益貢献度のいずれも海外たばこが全体の半分以上を占めており、国内たばこがあとに続くような構図になっています。
そして海外たばこは研究開発費と設備投資を含めると事業としてのクオリティはトップということになっています。
意外と加工食品はコストの割に利益が出るようです。
次に従業員1人あたりの売上と利益について見てみましょう。
※売上/従業員数・利益/従業員数の単位は百万円
売上/従業員数 順位
- 1位:国内たばこ
- 2位:医薬
- 3位:海外たばこ
- 4位:加工食品
- 5位:その他
利益/従業員数 順位
- 1位:国内たばこ
- 2位:海外たばこ
- 3位:医薬
- 4位:加工食品
- 5位:その他
1人あたり利益/売上 順位
- 1位:国内たばこ
- 2位:海外たばこ
- 3位:医薬
- 4位:加工食品
- 5位:その他
順位をまとめると以下のようになります。
従業員1人あたり 総合順位
- 1位:国内たばこ
- 2位:海外たばこ
- 3位:医薬
- 4位:加工食品
- 5位:その他
(参考)
セグメント 総合順位
- 1位:海外たばこ
- 2位:国内たばこ・加工食品
- 3位:医薬
- 4位:その他
事業としてのクオリティは海外たばこが1位でしたが、個人技では国内たばこの方が圧倒的に強いようです。
海外たばこは2位ではあるのですが、医薬に肉薄されていることから個人技はそこまで強くないことがわかります。
どこの国で仕事をしているのか
地域別 順位
- 1位:海外たばこ
- 2位:日本たばこ
海外売上が日本国内の2倍近くあるのでグローバル企業と言って差し支えないと思います。
会社の安定性を測る指標
- A:流動比率&自己資本比率
- B:CF計算書
A:流動比率&自己資本比率
流動比率は普通で、自己資本比率も普通です。
財務の健全性は全般的に普通のようです。
B:CF計算書
※単位は百万円
純利益と営業CFはあまり変わらないので利益の見た目と中身は一致しているようです。
投資CFに関しては2016年度のみけっこう使っているようですが、それ以外の年度は営業CFの内々に収めているので、まあまあ堅実な経営をしていると言えるでしょう。
会社の成長性を測る指標
※単位は百万円
そこまで大きく変化はしていないのですが、気になるのが売上と純利益が少しずつですが減っていっていることです。
少なくとも成長しているとは言い難い状態です。
投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い
- A:ROE(自己資本利益率)
- B:FCF(フリーキャッシュフロー)
- C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移
A:ROE(自己資本利益率)
ROE、つまり「投資家から預かったお金を使っていかに効率良く利益を出しているか」という観点で企業をチェックする場合、全世界的に見て
- 5%未満=最悪
- 5%=微妙に悪い
- 10%=普通
- 15%=まあまあ良い
- 20%以上=素晴らしい
となります。
ではROEの直近3年間の推移を見てみましょう。
ROEは良好なのでお金の使い方は上手いようです。
B:FCF(フリーキャッシュフロー)
※営業CF・実質設備投資・ネットFCFの単位は百万円
割とお金が必要なようです。
自由に使える資金はほとんど残っていません。
C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移
※単位は百万円
なんとも言えない感じに各数値ともデコボコしています。
ただ赤字にはなっていないだけでなく、営業CFにいたってはグングン増えていっているので不況耐性は割とあるように思えます。
まとめ
これまでJTを数字で見てきたことをまとめると、
- ・事業としてのクオリティは海外たばこ事業が一番良い
- ・個人技は国内たばこが圧倒的に強い
- ・海外売上比率60%以上のグローバル企業
- ・成長傾向にはなく、むしろ若干の下降傾向が見える
- ・お金の使い方は上手い
- ・毎年の設備投資に多額の資金が必要で、自由資金がほとんど残らない
- ・不況耐性は割とあるように思われる
ということになるでしょう。
ES・面接での想定訴求ポイント
ここでは有価証券報告書で調べてきたことを実際のESや面接でどうやって活かしていけるか、という点に絞って想定される訴求ポイントを挙げます。
海外で働きたいことをアピールする
会社としては海外たばこ事業が現状のメイン事業でなおかつ今後も伸ばしていきたいと考えているハズです。
なのでアピールの仕方として一番単純なのが会社の需要に対してマッチすること、すなわち海外で働きたいことを積極的にアピールすることだと思います。
有価証券報告書で調べたことから使えそうなところを捻り出すとしたら、上記のようになると思います。
有価証券報告書だけでなく、企業の「IR情報」という投資家に向けて公表している情報には業績や今後の方針などをわかりやすくパワーポイントでまとめたものもあるので、興味を持たれた方はそちらも見てみると良いかもしれません。