調味料大手の違いを数字で比較

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食品業界
2018年09月01日
調味料

ここでは日本の調味料大手の

  • ・味の素
  • ・キッコーマン
  • ・エスビー食品(以下:エスビー)
  • ・カゴメ
  • ・キューピー

の5社を有価証券報告書に記載されている事柄から比較することで、イメージではなくその企業ひいてはその業界の「事実」の確認が出来ればと思っています。

目次

  1. 主要子会社・関連会社の比較
  2. 事業規模の比較
  3. 安全性の比較
  4. 利益性の比較
  5. コスト&研究開発費の比較
  6. 従業員1人あたりの売上&利益の比較
  7. 事業セグメントの比較
  8. まとめ
  9. 志望動機として使えそうな点

主要子会社・関連会社の比較

表9
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事業規模の比較(単位:百万円)

表4

売上 順位

  • 1位:味の素
  • 2位:キューピー
  • 3位:キッコーマン
  • 4位:カゴメ
  • 5位:エスビー

純利益 順位

  • 1位:味の素
  • 2位:キッコーマン
  • 3位:キューピー
  • 4位:カゴメ
  • 5位:エスビー

味の素の圧倒的な事業規模の大きさが際立ちます。

事業規模はなんとなく3段階に分かれていて、「味の素」「キューピー&キッコーマン」「カゴメ&エスビー」といった区分けになっています。

安全性の比較

表2

流動比率 順位

  • 1位:キッコーマン
  • 2位:味の素
  • 3位:カゴメ
  • 4位:キューピー
  • 5位:エスビー

エスビーとキューピーの2社の流動比率が相対的に低いようです。

自己資本比率 順位

  • 1位:キッコーマン
  • 2位:キューピー
  • 3位:カゴメ
  • 4位:味の素
  • 5位:エスビー

自己資本比率に関してはエスビー以外はどこも50%を超えていて割と健全だということがわかります。

エスビーはこの中ではけっこう借金が多い体質のようです。

利益性の比較

表12

純利益率 順位

  • 1位:味の素
  • 2位:キッコーマン
  • 3位:カゴメ
  • 4位:キューピー
  • 5位:エスビー

事業規模ではかなり差があった味の素とキッコーマンですが、純利益率は拮抗しているようです。

ここではどちらかというとキッコーマンの方が優秀な印象。

ネットFCF 順位

  • 1位:味の素
  • 2位:キッコーマン
  • 3位:カゴメ
  • 4位:キューピー
  • 5位:エスビー

味の素が1位ですが、純利益額の差を考えるとここでもキッコーマンが善戦していることがわかります。

実質設備投資/営業CF 順位

  • 1位:キッコーマン
  • 2位:カゴメ
  • 3位:エスビー
  • 4位:味の素
  • 5位:キューピー

ここまでのキッコーマンの善戦の理由は相対的に低い設備投資比率にあるようです。

味の素とキューピーは売上のかなり多くの割合を設備投資に注ぎ込んでいるようです。

在庫回転率 順位

  • 1位:キューピー
  • 2位:エスビー
  • 3位:キッコーマン
  • 4位:味の素
  • 5位:カゴメ

キューピーの在庫回転率の高さが頭一つ抜けています。

そしてエスビーとキッコーマンがそれに続きます。

これだけ見るとマヨネーズとスパイスと醤油の消費スピードはケチャップと万能調味料よりなぜか速いということになります。

コスト&研究開発費の比較

表22

販管費/売上 順位

  • 1位:キューピー
  • 2位:味の素
  • 3位:キッコーマン
  • 4位:エスビー
  • 5位:カゴメ

キューピーと味の素が一歩リードしていることがわかります。

キッコーマンは中間くらいに位置していて、エスビーとカゴメは割とお金を使っているようです。

研究開発費/売上 順位

  • 1位:エスビー
  • 2位:キューピー
  • 3位:キッコーマン
  • 4位:カゴメ
  • 5位:味の素

僅差ですがエスビーが1位となっています。

そして5社の中では味の素が研究開発に積極的にお金を投じているようです。

従業員1人あたりの売上&利益の比較

表7

売上/従業員(単位:百万円) 順位

  • 1位:カゴメ
  • 2位:エスビー
  • 3位:キッコーマン
  • 4位:キューピー
  • 5位:味の素

カゴメとエスビーが割と優秀なようです。

味の素とキューピーは事業規模は大きいですが、個人技となるとそこまででもないようです。

営業利益/従業員(単位:百万円) 順位

  • 1位:キッコーマン
  • 2位:カゴメ
  • 3位:味の素
  • 4位:エスビー
  • 5位:キューピー

キッコーマンの圧倒的な強さが目立ちます。

味の素も順位を上げてきましたが、エスビーもそれに匹敵する個人技の強さを持っているようです。

1人あたり営業利益/売上 順位

  • 1位:味の素
  • 2位:キッコーマン
  • 3位:キューピー
  • 4位:カゴメ
  • 5位:エスビー

営業利益率に関しては味の素とキッコーマンの2強のようです。

事業セグメントの比較

味の素

表29
表34
表15

日本食品
調味料・加工食品、冷凍食品、コーヒー類
海外食品
調味料・加工食品、冷凍食品、加工用うま味調味料・甘味料、その他
ライフサポート
動物栄養、化成品
ヘルスケア
アミノ酸、その他
その他
製造受託、油脂、包材、物流、サービス他

「その他」を除くどのセグメントの営業利益率もだいたい同じくらいなので事業ポートフォリオを上手い具合に構築していることがわかります。

その中でも貢献度1位は「海外食品」で、2位の「日本食品」と並んでこの会社の根幹を成していることがわかります。

キッコーマン

表14
表25
表21

国内食料品製造・販売
しょうゆ、つゆ・たれ等しょうゆ関連調味料、デルモンテトマト加工品・缶詰、野菜果実飲料、豆乳飲料等、みりん、ワイン等の製造・販売
国内その他
医薬品、化成品、不動産賃貸、物流、間接業務の提供
海外食料品製造・販売
海外におけるしょうゆの製造・販売、デルモンテトマト加工品・缶詰の製造・販売、健康食品の製造・販売
海外食料品卸売
東洋食品等の仕入・販売

売上貢献度は「国内食料品製造・販売」と「海外食料品卸売」の2つが高いですが、利益貢献度となると「海外食料品製造・販売」の存在感が一気に増しています。

利益率でも「国内食料品製造・販売」と「海外食料品卸売」はあんまり効率が良くなく、「海外食料品製造・販売」と「国内その他」の圧倒的な効率の良さが際立っています。

いずれにせよ海外展開には大成功しているようです。

エスビー

表3
表33
表26

「食料品」は優秀な事業で、「調理済食品」は利益率が改善しない限りは目下リストラ対象という非常にわかりやすい事業ポートフォリオをしています。

ただ「食料品」にしても「調理済食品」にしても利益率を見ると徐々に改善してきているようなのでこの傾向が今後も続くようであるならば少し期待が持てます。

カゴメ

表17
表5
表24

加工食品
野菜生活100シリーズ、トマトジュース、トマトケチャップ、トマト系調味料など
生鮮トマト、ベビーリーフ、パックサラダなど
その他
不動産事業、物流事業、業務受託事業
国際
トマトの種子開発・農業生産、商品開発、加工、販売

イメージ通りに「加工食品」がメイン事業のようです。

そして意外にも「国際」も貢献度が割とあるようで、「その他」に関しては異常な利益率を記録しています。

キューピー

表32
表18
表13

調味料
マヨネーズ・ドレッシング類、食酢等
タマゴ
液卵、凍結卵、乾燥卵、タマゴスプレッド、厚焼卵、錦糸卵等
サラダ・惣菜
サラダ、惣菜、弁当、おにぎり、パッケージサラダ等
加工食品
ジャム、パスタソース、スイートコーン等の瓶缶詰、育児食、介護食等
ファインケミカル
ヒアルロン酸等
物流システム
食品の運送・保管、食品の運送や保管に関する車両・物流機器・燃料等の販売
共通
食品製造機械の販売(株式会社芝製作所)

メイン事業における売上貢献度と利益貢献度にほとんど差はなく、「調味料」のみ利益貢献度において強い存在感を放っています。

各社の海外売上比率に関しては味の素とキッコーマンの2社が海外展開に成功していることがわかります。

表10

まとめ

これまで見てきた 社の順位を「利益性」「コスト」「安全性」「チーム力」「個人技」の括りで下記します。


各数値の偏差値を基準として順位を算出しています。偏差値の平均は50です。


平均以下の項目を赤字で示しています。

表20

利益性 総合順位

  • 1位:味の素(偏差値:62)
  • 2位:キッコーマン(偏差値:61)
  • 3位:キューピー(偏差値:45)
  • 4位:カゴメ(偏差値:44)
  • 5位:エスビー(偏差値:37)

なんだかんだで味の素が1位ですが、事業規模の差を他のところで挽回してキッコーマンがかなり味の素に肉薄していることがわかります。

表23

コスト 総合順位

  • 1位:キッコーマン(偏差値:62)
  • 2位:キューピー(偏差値:59)
  • 3位:エスビー(偏差値:50)
  • 4位:カゴメ(偏差値:45)
  • 5位:味の素(偏差値:34)

コスト効率に関してはキッコーマンが1位となっており、味の素はこの項目では最下位に沈んでいます。

表30

安全性 総合順位

  • 1位:キッコーマン(偏差値:65)
  • 2位:味の素(偏差値:52)
  • 3位:キューピー(偏差値:51)
  • 4位:カゴメ(偏差値:49)
  • 5位:エスビー(偏差値:34)

財務の健全性においても2位以下の大差をつけてキッコーマンが1位となっています。

そしてエスビーの相対的な弱さが悪目立ちしています。

表31

チーム力 総合順位

  • 1位:味の素(偏差値:67)
  • 2位:キッコーマン(偏差値:53)
  • 3位:キューピー(偏差値:48)
  • 4位:カゴメ(偏差値:44)
  • 5位:エスビー(偏差値:38)

利益性の項目ではキッコーマンとデッドヒートを繰り広げていた味の素ですが、チーム力だけとってみると圧勝のようです。

表19

個人技 総合順位

  • 1位:キッコーマン(偏差値:67)
  • 2位:カゴメ(偏差値:54)
  • 3位:味の素(偏差値:48)
  • 4位:エスビー(偏差値:46)
  • 5位:キューピー(偏差値:36)

ただ個人技ではキッコーマンの圧勝で、味の素は平均的な力しか持ち合わせていないことがわかります。

そしてチーム力では平均的な力だったキューピーは個人技ではかなりその弱さが目立ち、逆にエスビーの個人技は味の素とそこまで変わらないようです。

表16

総合順位

  • 1位:キッコーマン(偏差値:65)
  • 2位:味の素(偏差値:56)
  • 3位:キューピー(偏差値:48)
  • 4位:カゴメ(偏差値:45)
  • 5位:エスビー(偏差値:36)

あらゆる項目でそつなく点を取り続けたキッコーマンが1位となっており、味の素は事業規模での大きなリードを守りきれませんでした。

各社の特徴をまとめると以下のようになります。

表1
  • 強み:事業規模の大きさ、チーム力の強さ
  • 弱み:コスト効率の悪さ、個人技はそんなに強くない点
表6
  • 強み:個人技の強さ、財務の健全性の高さ、総合的なレベルの高さ
  • 弱み:特になし
表8
  • 強み:コスト効率の良さ
  • 弱み:利益性の低さ、財務の健全性の低さ
表27
  • 強み:個人技の強さ
  • 弱み:チーム力の弱さ
表28
  • 強み:コスト効率の良さ
  • 弱み:個人技の弱さ

志望動機として使えそうな点

味の素

業界最大の事業規模を誇る点

会社としての総合力ではキッコーマンの次点に甘んじましたが、事業規模とチーム力だけとってみれば業界最大であることに変わりはありません。

なので「最大手の看板を背負って働きたい」と考えている人にとっては最も向いているかもしれません。

海外売上比率が50%を超えている点

この会社の主戦場はもはや海外であることを確認してきました。

なので「海外で働くチャンスが欲しい」という人にとっては向いているかもしれません。

キッコーマン

業界随一の優良企業である点

事業規模では味の素に遠く及びませんが、総合的には業界最優良の企業であることを確認してきました。

なので「優良企業で働きたい」と考えている人にとっては最も向いているかもしれません。

海外売上比率が50%を超えている点

この会社の主戦場も海外であることを確認してきました。

なので「海外で働くチャンスが欲しい」という人にとっては向いているかもしれません。

エスビー

個人技では業界最大手の味の素と比較しても遜色ない点

総合最下位のこの会社ですが、こと個人技だけ見てみると利益率を除いては業界最大手の味の素と比較して遜色ないことを確認してきました。

その点を鑑みると単純に投下人員の差がチーム力の差として出ているだけになるので味の素の選考でダメだった場合の代替としては割と良いのではないかと思います。

カゴメ

個人技がかなり強い点

キッコーマンほどではありませんが、この会社の個人技は5社の中ではかなり強い部類に入ります。

なので「優秀な人材がいる環境で揉まれて成長したい」と考えている人にとっては向いているかもしれません。

ただこの会社もキッコーマンの選考でダメだった場合の代替として、ということになりそうです。

キューピー

個人技の弱さをチーム力で補っている点

この会社の個人技は5社中最弱であることを確認してきましたが、それ以外の項目ではコンスタントに安定した数値を記録しており、チーム力に関しては業界最優良企業であるキッコーマンに肉薄しています。

このことからこの会社には「個人技の弱さを補う、システマティックなチーム力の強さがある」と推測します。

なので「個人でのスタンドプレーは苦手だけれども、チームの中で必要な役割を担う方が力を発揮出来る傾向がある」人にとっては最も向いているかもしれません。

これまでまとめてきた事項は数字を元にした会社の実態ではありますが、より正確に実態を掴むためにも説明会で質問してみたり実際に社員の人に会ったりして、調べた情報とズレていないかどうかを確認してみた上で、ESや面接で使用することをおすすめします。