企業の実態を丸裸!~有価証券報告書を使った企業研究~ 「オリエンタルランド編」

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レジャー施設業界
2018年02月25日
メリーゴーランド

はじめに

この記事では「就活生=投資家」「就職=自分という資本を企業に投資する」と定義した上で、いわゆる就活生に人気の上場企業を「有価証券報告書」という上場企業なら毎年提出しなければならない成績表に書かれている「数字」という客観的事実のみで見てみようとするものです。

なのでここに書かれていることは、あくまで企業に対する直感を補足するものないしは裏付けるものとして捉え、就活に役立ててもらいたいと思っています。

では就活人気企業として、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドを取り上げます。

目次

  1. どんな仕事の種類があるのか
  2. 会社の安定性を測る指標
  3. 会社の成長性を測る指標
  4. 投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い
  5. まとめ
  6. おそらく、こういう人に向いている
  7. ES・面接での想定訴求ポイント

オリエンタルランドはいったいどんな商売をしているのでしょうか?

最新の有価証券報告書(2017年3月期)から抜粋すると、3つの事業に分けることが出来ます。

テーマパーク事業
テーマパークの経営・運営(東京ディズニーランド、東京ディズニーシー等)
ホテル事業
ホテルの経営・運営(ミリアルリゾートホテルズ等)
その他
イクスピアリの経営・運営、モノレールの経営・運営(イクスピアリ、舞浜リゾートライン等)

とのことです。

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どんな仕事の種類があるのか

有価証券報告書によると、各セグメントの売上割合は以下の通り

表7

3年間平均で売上に占める割合が大きいのは上から順に

  • 1位:テーマパーク
  • 2位:ホテル
  • 3位:その他(イクスピアリ等)

ということになっています。

しかし、一般的には企業が追求するのは売上ではなく利益です。

そこで企業の最終的な利益を示す純利益の項目における各セグメントの割合を見ていきましょう。

表9

ここでの順位付をすると

  • 1位:テーマパーク(売上1位)
  • 2位:ホテル(売上2位)
  • 3位:その他(イクスピアリ等)(売上3位)

そして各セグメントの従業員数はどうなっているかというと、

表8

となっています。

売上・利益・従業員の配置の構成はともに同じで、ここまではほぼ世間一般のイメージ通りで「ディズニーランドで利益を出している」ということになります。

ちなみにこの会社は日本でしか商売をしていないので、地域別の売上高は記載していません。

会社の安定性を測る指標

  • A:流動比率
  • B:自己資本比率
  • C:CF計算書

A:流動比率

表11

流動比率は非常に高いようです。毎年ほぼ200%以上で安定しています。

よって、短期の財務状態は良好と言うことが出来ます。

B:自己資本比率

(グループ全体連結)

表10

しかし就活生のみなさんが就職するのは「オリエンタルランド本体」なので、本体のみの数字を見てみましょう。

(単体)

表2

本体と単体を比べてみてもほとんど違いがありません。

そして自己資本比率が安定して70%を超えていることから、この会社は短期と長期のどちらも財務状態は非常に良好で、会社として倒産する可能性はほとんどないと言っても過言ではないと思います。

C:CF計算書

CF計算書はどうなっているかというと、

表1

営業CFは毎年安定して1,100億円程度稼ぎ出していますが、投資CFは年度によってまちまちなようです。

一方、財務CFがマイナスなのは株主への配当などの株主還元にお金を使っている為です。

投資CFの中身についてはのちほどのFCF(フリーキャッシュフロー)の項目で見ていくこととします。

会社の成長性を測る指標

表4

毎年徐々にではありますが、成長していることがわかります。

ディズニーランドというと完成されたテーマパークで、会社として安定はしているが頭打ちがあるのではないかというイメージの方が先行しそうですが、実際はこの会社は「成長出来る企業」として捉えてよさそうです。

投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い

  • A:ROE(自己資本利益率)
  • B:FCF(フリーキャッシュフロー)
  • C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

A:ROE(自己資本利益率)

ROE、つまり「投資家から預かったお金を使っていかに効率良く利益を出しているか」という観点で企業をチェックする場合、全世界的に見て

  • 5%未満=最悪
  • 5%=微妙に悪い
  • 10%=普通
  • 15%=まあまあ良い
  • 20%以上=素晴らしい

となります。

ではROEの直近3年間の推移を見てみましょう。

表3

利益効率という観点で見ると、「普通」と言えそうです。

B:FCF(フリーキャッシュフロー)

表6

まずさきほどの「投資CF」の中身を確認しますが、投資CFのマイナスが大きい2015年度と2016年度に関しては、マイナスの大半が設備投資以外の「有価証件の買い付け」や「定期預金の預け入れ」によって占められています。

本業に必要な設備投資で使った費用である「実質設備投資による支出」の項目を見てみると、毎年だいたい稼ぎ出した営業CFの半分以下しか使っていません。

テーマパーク事業やホテル事業といった比較的「設備投資にお金がかかりそう」なイメージの商売ですが、実際はあまり設備投資にお金がかかっておらず、けっこうな額を会社に留保することが出来ています。

C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

表5

リーマンショック時の売上高・純利益・営業CFの推移ですが、ここでも徐々に成長していっていることがわかります。

普通、エンターテイメントとか趣味とかの産業は不況時にはその影響を強く受けて数字がガタ落ちすることが多いのですが、ことこの会社に関してはあまり不況とかそういった類のものは関係がなさそうです。

まとめ

これまでオリエンタルランドを数字で見てきたことをまとめると、

  • ・だいたい、世間一般のイメージと実態は一致している
  • ・財務基盤は非常に良好
  • ・「安定企業」というよりむしろ「成長企業」と捉えることが出来る
  • ・意外と設備投資にお金がかからず、自由に使えるお金がけっこう多い
  • ・不況時でも安定していてかつ成長出来る可能性が高い

ということになるでしょう。

おそらく、こういう人に向いている

以上見てきたことからこの会社に向いている人を挙げるとするならば、以下のような感じになると思います。

  • ・会社のとしての「安定」を求める人
  • ・潤沢な自由資金を使って「何がしかの企画がしたい」人

ES・面接での想定訴求ポイント

ここでは有価証券報告書で調べてきたことを実際のESや面接でどうやって活かしていけるか、という点に絞って想定される訴求ポイントを挙げます。

中期経営計画から攻める

この会社が発表している「2020中期経営計画」では以下のようなことが明記されています。

”新鮮さ”を提供するハードの強化

→「ゲストの満足度を高める」アトラクションやイベントの強化

”快適さ”を提供するハードの強化

→混雑緩和、全天候型のシアターの導入、食事の待ち時間を減らす試みなど、「ゲストの利便性向上」の強化

ソフト(人財力)の強化

→新規研修プログラムの導入などを通じた、ゲストに楽しい時間を過ごしてもらうための「ホスピタリティの更なる向上」快適に過ごしてもらうための「オペレーションの更なる改善」を目指したもの

この上記事項から導き出されるキーワードは「満足度の向上」「利便性の向上」「ホスピタリティの向上」「改善」の4つです。

この「4つの事項=会社が求めているもの」と定義して志望動機や自己PRで使用するのであれば、

「自分は『ホスピタリティ』を以て、『利便性や快適さ』を追求し『改善』していくことにより、顧客の『満足度』を高めることに並々ならぬモチベーションと喜びを感じており、それを社会人になってもやっていきたい。」

というようなアピールの方法で、「会社が求めているものを満たす資質とモチベーションがあること」を採用担当者の頭の中に想像させることが出来れば良いのではないかと思います。

決して「ディズニーランドが好きで~」とか「年間300回通ってます」とかそういう「度を越えたディズニー好き」ということをアピール出来なければダメということではないと思います。

むしろそのような人は採用担当者からしてみたら何百回も聞いている飽き飽きするフレーズであるばかりか、今後社員として働いてもらうより「会社の利益に貢献してくれる上得意様」としてパークに来てくれる方が会社としては有難かったりするように思います。

それよりも「日本でも最高クラスのホスピタリティと改善の努力を以てして、日本最大のテーマパークというイメージに値する新鮮な感動と高い満足度を顧客に提供する」といった会社の方針に賛同し、貢献出来る人間であることをアピールした方が良いのではないかと思います。

居酒屋でのアルバイト経験をこの会社に寄せた自己PRにするのであれば寄せるならば、

「お客さんが『快適』に過ごせてかつ『満足度』を高めることが出来るように、○○のようなことを考えて実行しました。その結果お客さんから○○のようなことを言ってもらえてお店の業績も○○になりました。業態やジャンルは全く違いますが、こういったことを御社でもやっていきたいです。」

というふうにアピール出来ると思いますし、スーパーのレジ打ちのアルバイトでも同じフォーマットでアピール出来ると思います。

くどいようですが、アピールするポイントは「ディズニー好き」ということではなく、「満足度の向上」「利便性の向上」「ホスピタリティの向上」「改善」の4つです。

この4つが先に来てから「ディズニーに対するモチベーション」をアピールすると採用担当者の頭の中に面接相手の「ディズニーで働いている姿」を想像させることが出来るのではないかと思います。

有価証券報告書で調べたことから使えそうなところを捻り出すとしたら、上記のようになると思います。

有価証券報告書だけでなく、企業の「IR情報」という投資家に向けて公表している情報には業績や今後の方針などをわかりやすくパワーポイントでまとめたものもあるので、興味を持たれた方はそちらも見てみると良いかもしれません。

特に「株主・投資家の皆様へ」→「経営について」→「トップメッセージ」→「経営計画」と辿っていくとたどり着く、「2020中期経営計画」の資料は今後予定されているアトラクションの詳細だったりイメージ図だったりが盛りだくさんなので、一見してみることをおすすめします。