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企業の実態を丸裸!~有価証券報告書を使った企業研究~ 「三菱地所編」

※本サイトでは、プロモーションが含まれている場合があります。
不動産業界
2018年06月23日
ビル群

はじめに

この記事では「就活生=投資家」「就職=自分という資本を企業に投資する」と定義した上で、就活生に人気がありそうな上場企業を「有価証券報告書」という上場企業なら毎年提出しなければならない成績表に書かれている「数字」という客観的事実のみで見てみようとするものです。

なのでここに書かれていることは、あくまで企業に対する直感を補足するものないしは裏付けるものとして捉え、就活に役立ててもらいたいと思っています。

では就活人気企業として、三菱地所を取り上げます。

目次

  1. どんな仕事の種類があるのか
  2. どこの国で仕事をしているのか
  3. 会社の安定性を測る指標
  4. 会社の成長性を測る指標
  5. 投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い
  6. まとめ
  7. ES・面接での想定訴求ポイント

三菱地所はいったいどんな商売をしているのでしょうか?

最新の有価証券報告書から抜粋すると、9つの事業に分けることが出来ます。

ビル
ビル賃貸・運営・管理、駐車場、地域冷暖房、光ファイバー網賃貸、ホテル経営など
生活産業・不動産
商業施設、物流施設、ホテル開発など
住宅
マンション・戸建住宅等の建設・販売・賃貸、不動産仲介、ニュータウンの開発、ゴルフ場・テニスクラブの経営など
海外
不動産開発・賃貸、住宅開発、オフィス再開発、商業施設開発、物流施設など
投資マネジメント
不動産投資に関する総合的サービス、REITの運用、不動産ファンドの運用など
設計管理
建築・土木工事の設計管理、建築工事・内装工事等の請負など
ホテル
「ロイヤルパークホテル」の開発・運営など
不動産サービス
不動産仲介など
その他
自社グループの情報システム開発・保守管理、給与厚生研修関連業務の受託など
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どんな仕事の種類があるのか

各セグメントの直近3年間の平均数値は以下になります。

表12

※研究開発費は計上していないので記載を省略します

売上 順位

  • 1位:ビル
  • 2位:住宅
  • 3位:生活産業・不動産
  • 4位:海外
  • 5位:ホテル
  • 6位:不動産サービス
  • 7位:投資マネジメント
  • 8位:設計監理
  • 9位:その他

売上に関しては「ビル」と「住宅」の2本柱のようです。

「三菱地所」と聞くと「BtoBビジネス」の印象が先行しますが、意外と「BtoCビジネス」も売上においてはウェイトが高いようです。

利益 順位

  • 1位:ビル
  • 2位:生活産業・不動産
  • 3位:海外
  • 4位:住宅
  • 5位:投資マネジメント
  • 6位:ホテル
  • 7位:不動産サービス
  • 8位:設計監理
  • 9位:その他

ただ営業利益となると「BtoCビジネス」の「住宅」の存在感が消えてきて、「ビル」と「生活産業・不動産」に代表される「BtoBビジネス」が全体の7割以上を占めます。

特に「ビル」は圧倒的な利益貢献度を誇るため、世間一般のイメージ通りにこの会社にとっての本業と言えるでしょう。

設備投資額 順位(少ない順)

  • 1位:投資マネジメント、設計監理、ホテル、不動産サービス、その他
  • 2位:住宅
  • 3位:海外
  • 4位:生活産業・不動産
  • 5位:ビル

設備投資には「ビル」と「生活産業・不動産」は非常にお金がかかることがわかります。

主力事業ではありますが、コスト効率的にはあまり優れていないようです。

順位をまとめると以下のようになります。

表5

セグメント 総合順位

  • 1位:ビル
  • 2位:住宅
  • 3位:生活産業・不動産
  • 4位:海外
  • 5位:ホテル
  • 6位:投資マネジメント
  • 7位:不動産サービス
  • 8位:設計監理
  • 9位:その他

なんやかんや言いながらも事業としてのクオリティが一番高いのは「ビル」ということになっています。

そして利益貢献度2位の「生活産業・不動産」はその設備投資額の大きさと売上貢献度の小ささから事業の総合的なクオリティは3位となっており、トータルで見ると僅差で「住宅」の方が事業としてのクオリティは高いということになっています。

次に従業員1人あたりの売上と利益について見てみましょう。

表8

※売上/従業員数・利益/従業員数の単位は百万円

売上/従業員数 順位

  • 1位:生活産業・不動産
  • 2位:ビル
  • 3位:海外
  • 4位:住宅
  • 5位:投資マネジメント
  • 6位:不動産サービス
  • 7位:ホテル
  • 8位:設計管理
  • 9位:その他

利益/従業員数 順位

  • 1位:生活産業・不動産
  • 2位:ビル
  • 3位:海外
  • 4位:投資マネジメント
  • 5位:住宅
  • 6位:不動産サービス
  • 7位:設計管理
  • 8位:ホテル
  • 9位:その他

1人あたり利益/売上 順位

  • 1位:海外
  • 2位:生活産業・不動産
  • 3位:ビル
  • 4位:投資マネジメント
  • 5位:その他
  • 6位:設計管理
  • 7位:不動産サービス
  • 8位:ホテル
  • 9位:住宅

上記3項目に共通して言えるのが「生活産業・不動産、ビル、海外の3事業が圧倒的に個人技が強いこと&利益効率が高いこと」です。

順位をまとめると以下のようになります。

表9

従業員1人あたり 総合順位

  • 1位:生活産業・不動産
  • 2位:ビル、海外
  • 3位:投資マネジメント
  • 4位:住宅
  • 5位:不動産サービス
  • 6位:設計管理
  • 7位:ホテル、その他

(参考)

セグメント 総合順位

  • 1位:ビル
  • 2位:住宅
  • 3位:生活産業・不動産
  • 4位:海外
  • 5位:ホテル
  • 6位:投資マネジメント
  • 7位:不動産サービス
  • 8位:設計監理
  • 9位:その他

「生活産業・不動産」「ビル」「海外」に関しては順当な順位なのですが、個人技では「投資マネジメント」が順位を上げていることから、「投資マネジメント」は事業としての貢献度はそこまで高くないながらも個人技においては一定の力量を持っていることがわかります。

どこの国で仕事をしているのか

表7

地域別 順位

  • 1位:日本
  • 2位:海外

思いっきりドメスティックな企業であることが確認出来ますが、さきにも触れたように海外事業は一定の事業としてのクオリティは有しているので苦戦している訳ではないようです。

おそらくこの会社は「今は海外に積極的に打って出るタイミングではない」ということなのだろうと推測します。

会社の安定性を測る指標

  • A:流動比率&自己資本比率
  • B:CF計算書

A:流動比率&自己資本比率

表11

流動比率・自己資本比率ともにここ3年間はほとんど変わっていないようです。

キレイと言えばキレイなのですが、ちょっと不気味と言えば不気味な気もします。

そして流動比率はあまり問題なさそうですが、自己資本比率に関しては若干低めな印象です。

B:CF計算書

表4

※単位は百万円

純利益を上回る営業CFを稼いではいますが、それを更に上回る投資CFの赤字が気になるところです。

不動産デベロッパーという業態上、ビル開発などでお金がかかるのは理解出来るのですがちょっとお金を使いすぎな気もします。

会社の成長性を測る指標

表10

※単位は百万円

売上高を見るとビミョウなのですが、純利益は伸びている(営業利益も伸びていました)のでコスト削減などで経営が合理的になっているものと思われます。

「経営の合理性は成長している」とは言えますが「事業が純粋に成長している」とは言えない感じです。

投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い

  • A:ROE(自己資本利益率)
  • B:FCF(フリーキャッシュフロー)
  • C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

A:ROE(自己資本利益率)

ROE、つまり「投資家から預かったお金を使っていかに効率良く利益を出しているか」という観点で企業をチェックする場合、全世界的に見て

  • 5%未満=最悪
  • 5%=微妙に悪い
  • 10%=普通
  • 15%=まあまあ良い
  • 20%以上=素晴らしい

となります。

ではROEの直近3年間の推移を見てみましょう。

表3

ROEの絶対値は低く、お世辞にもお金の使い方は上手いとは全然言えないこの会社ですが、ここ数年徐々にその数値が上がってきていることからやはり経営は合理的になってきているようです。

B:FCF(フリーキャッシュフロー)

表2

※営業CF・実質設備投資・ネットFCFの単位は百万円

既出の懸念事項だった「投資でお金使い過ぎ問題」ですが、やはり湯水のようにお金を使いまくっているようです。

2015年度は落ち着いていますが、それ以降は堰を切ったように身の丈を大きく超えてお金を使っています。

会社の社会的な信用度が高いので今のところは財務CFで借金などをして投資CFの赤字を賄えるからいいのですが、 正直言ってかなり不安要素ではあります。

C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

表1

※単位は百万円

売上高は伸びていっていますが、それとキレイに反比例して純利益はガタ落ちしています。

営業CFが大幅なプラスなので経営を根幹を揺るがすようなショックは受け辛いようですが、いずれにせよ業績は景気にかなり大きく左右されるようです。

まとめ

これまで三菱地所を数字で見てきたことをまとめると、

  • ・売上高は「BtoBビジネス」と「BtoCビジネス」で折半している
  • ・利益は「ビル」「生活産業・不動産」「海外」などの「BtoBビジネス」が主力
  • ・ドメスティックな企業だけど、海外で苦戦はしていない(むしろ儲かっている)
  • ・借金は少し多め
  • ・ここ数年で事業の成長はしていないが経営は合理的になってきている
  • ・お金の使い方は下手
  • ・投資でお金を使い過ぎている
  • ・景気の影響をかなり大きく受ける

ということになるでしょう。

ES・面接での想定訴求ポイント

ここでは有価証券報告書で調べてきたことを実際のESや面接でどうやって活かしていけるか、という点に絞って想定される訴求ポイントを挙げます。

主力事業が「BtoBビジネス」な点

この会社の事業の肝は「個人相手に少額取引を繰り返して収益を積み上げる」のではなく、「莫大なお金をかけてビルや商業施設などの大型物件を開発し、企業相手の取引で一発大きく稼ぐ」というものだと思います。

そういう意味では漠然と「BtoBの何か大きなプロジェクトに携わりたい」と考えている人にとってはうってつけの環境だと想定されます。

「投資マネジメント」の業務に携わりたいことをアピールする

主力事業は「BtoBビジネス」でその中でも「ビル」や「生活産業・不動産」などの規模が大きなビジネスが幅を利かせているのですが、そこを狙ってくる競合就活生は非常に多いと想定されます。

なので敢えて「ビル」や「生活産業・不動産」を避けて、現状の売上と利益の貢献度は低いながらもそれら2事業に匹敵する利益率を誇る「投資マネジメント」をアピールポイントとしてプッシュします。

目的は「会社側の需要へのマッチ」と「競合就活生との差別化」です。

業務としては「不動産デベロッパー」というよりも「不動産投資」となるのでどちらかというと「金融寄り」になるとは思いますが、コストも設備投資費用もそこまでかからないので会社としては伸ばせるものなら積極的に伸ばしていきたいと考えていると推測します。

有価証券報告書で調べたことから使えそうなところを捻り出すとしたら、上記のようになると思います。

有価証券報告書だけでなく、企業の「IR情報」という投資家に向けて公表している情報には業績や今後の方針などをわかりやすくパワーポイントでまとめたものもあるので、興味を持たれた方はそちらも見てみると良いかもしれません。