企業の実態を丸裸!~有価証券報告書を使った企業研究~ 「博報堂DYホールディングス編」

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2018年02月16日
ビル

はじめに

この記事では「就活生=投資家」「就職=自分という資本を企業に投資する」と定義した上で、いわゆる就活生に人気の上場企業を「有価証券報告書」という上場企業なら毎年提出しなければならない成績表に書かれている「数字」という客観的事実のみで見てみようとするものです。

なのでここに書かれていることは、あくまで企業に対する直感を補足するものないしは裏付けるものとして捉え、就活に役立ててもらいたいと思っています。

では就活人気企業として、博報堂DYホールディングス(以下:博報堂)を取り上げます。

目次

  1. どんな仕事の種類があるのか
  2. どこの国で仕事をしているのか
  3. 会社の安定性を測る指標
  4. 会社の成長性を測る指標
  5. 投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い
  6. まとめ
  7. ES・面接での想定訴求ポイント
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どんな仕事の種類があるのか

有価証券報告書によると、各セグメントの売上割合は以下の通りです。

まずは業務区分別から(上から比率が高い順になっています)

表10

続いて業種別です。(同上)

表2

近年テレビ離れがどうのこうのと世間で言われていますが、業務区分別を見てみると少なくとも広告代理店とテレビ業界はまだべったりのようです。

そして各メディアへの売上の中でテレビに次いで高い比率なのが「インターネット広告」になっており、新聞やラジオなどのメディアへの売上は大してないことがわかります。

業種別に関しては幅広い分野をカバーしていることがわかりますが、

その中でも「飲料・嗜好品」と「情報・通信」の業種が割と大きな比率を占めているので、もし仕事をすることになったらば確率的にはこの2つの業種に関わる可能性が高い

ということになります。

どこの国で仕事をしているのか

表11

豆知識を言うと、電通は海外の企業を買収したりしているので全体に占める海外売上比率は50%以上ある、いわゆるグローバル企業です。

対して博報堂は思いっきりドメスティックな企業ということがわかります。

会社の安定性を測る指標

  • A:流動比率
  • B:自己資本比率
  • C:CF計算書

A:流動比率

表4

B:自己資本比率

これは「純資産(会社が保有している返さなくていいお金)」を「総資産(会社が保有している純資産や借金を含めた全てのお金)」で割ったものです。

これでわかるのは会社が保有している全ての資産(現金、建物、商品在庫など)の内、何割を返さなくてもいいお金でまかなっているのかということです。

具体的な数値で見てみましょう。

グループ全体連結

表3

C:CF計算書

CF計算書はどうなっているかというと、

表6

純利益と営業CFの差がほとんどないことから、この会社の実際の利益は見た目と同じ程度だということがわかります。

そして投資CFですが、これは稼ぎ出した営業CFに対してかなり低い数値になっていることから、会社として冒険しないで割と支出を抑えていることがわかります。

財務CFも毎年マイナスなので借金返済や配当の支払いなどをきっちりと行っている様子です。

会社の成長性を測る指標

表5

直近3年間の売上高と純利益の推移ですが、売上高は少しずつですが伸びていっていることがわかります。

なので商売の規模感は成長していると言ってよいと思います。

ただ純利益はデコボコしているので、まだ安定はさせられていない様子です。

投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い

  • A:ROE(自己資本利益率)
  • B:FCF(フリーキャッシュフロー)
  • C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

A:ROE(自己資本利益率)

ROE、つまり「投資家から預かったお金を使っていかに効率良く利益を出しているか」という観点で企業をチェックする場合、全世界的に見て

  • 5%未満=最悪
  • 5%=微妙に悪い
  • 10%=普通
  • 15%=まあまあ良い
  • 20%以上=素晴らしい

となります。

ではROEの直近3年間の推移を見てみましょう。

表8

なんと言うか、普通ですね。

B:FCF(フリーキャッシュフロー)

表7

この項目を見ると近年は稼ぎ出した営業CFのうちほとんどを設備投資および買収に使ってしまっていることがわかります。

つまりはそれだけ現行の商売の維持にお金がかかる、ということを示唆しています。

そういう意味では商売の効率という面ではそこまで良くないということになります。

C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

表9

数字を見ているとリーマンショックの影響が一番きつかった2009年度は純利益・営業CFともに赤字に転落していることから、景気の影響を受けやすい会社だと言えます。

ただ赤転した次年度は純利益・営業CFともに黒字に復活しているので、根幹を揺るがすほどのダメージを受けるということではないようです。

まとめ

これまで博報堂を数字で見てきたことをまとめると、

  • ・メディアへの売上においてはテレビ広告が大きな割合を占め、その次にインターネット広告が比較的大きな割合を占める
  • ・「飲料・嗜好品」と「情報・通信」に関連した仕事に従事する可能性が高い
  • ・微弱にではあるが、成長傾向にはある
  • ・財務基盤は普通
  • ・会社としての商売の効率性はあんまり良くない
  • ・景気の影響は受けやすい可能性が高い

ということになるでしょう。

ES・面接での想定訴求ポイント

ここでは有価証券報告書で調べてきたことを実際のESや面接でどうやって活かしていけるか、という点に絞って想定される訴求ポイントを挙げます。

有報内の中期基本戦略から攻める

博報堂が定めている「中期基本戦略」の中に「アジアを中心とした新興国での体制強化」という項目があります。

ポイントとして挙げられているのは以下の事項です。

  • ・アセアンには大きな成長機会があると考えている
  • ・特にモータリゼーションの本格化は、自動車業種を最大の顧客基盤とする当社グループにとっては大きなチャンス
  • ・日系得意先対応の強化&ローカル得意先の獲得・拡大に注力
  • ・アジアでの基盤を「核」にしながら、その他新興国への新規参入、更には得意先企業のグローバル・マーケティング・ニーズにも対応する

以上の点、つまり企業側からのニーズに対して就活生のみなさんがESや面接でアピールするのは

「海外、なんならアセアン地域で働きたいモチベーションがあるということ」

です。

まず博報堂の現状を整理すると、最大の競争相手である電通は既に海外に販路を拡げて売上の過半を海外であげているのに対して、博報堂は売上の過半を日本でしかあげられていません。

そういう意味でも、株主からの「増収増益要求」に応えなければならないプレッシャーからも海外の販路拡大は必須なワケです。

そしてそのチャンスは都合が良いことに、どうやら地理的にも近いアセアンにあることがわかっているので、そこに人員を送り込みたいと考えているハズです。

なのでみなさんはそこを狙い撃ちしに行くことになります。

この作戦は競合との差別化も兼ねています。

外資系の広告代理店に就活するのならまだしも、博報堂に就活しにくる競合の大半は「日本での仕事」を前提においてESや面接に臨むものと思われます。

そしてその前提においてアピールおよび競合との差別化をすることは「自分はいかに面白くて日本での仕事で使えそうか」ということになります。

もうそうなってくると、よっぽどインパクトのある話をしなければ競合との差別化は出来ません。

なので

そもそもアピールする点を「日本において日本企業のマーケティングを支援する能力とポテンシャルの有無」から「日本じゃなくて海外で日系企業や現地企業のマーケティングを支援したいというモチベーションの有無」に変えることによって、差別化を図ろう

という作戦です。

有価証券報告書で調べたことから使えそうなところを捻り出すとしたら、上記のようになると思います。

有価証券報告書だけでなく、企業の「IR情報」という投資家に向けて公表している情報には業績や今後の方針などをわかりやすくパワーポイントでまとめたものもあるので、興味を持たれた方はそちらも見てみると良いかもしれません。