大手広告代理店の違いを数字で比較

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広告業界
2019年09月10日
握手

ここでは日本の大手広告代理店である「電通」「博報堂DYホールディングス(以下:博報堂)」「アサツー・ディ・ケイ(以下:ADK)」の3社を有価証券報告書に記載されている事柄から比較することで、イメージだけでなくその企業ひいてはその業界の「事実」の確認が出来ればと思っています。

目次

  1. 有名子会社・関連会社の比較
  2. 事業規模の比較
  3. 安全性の比較
  4. 利益性の比較
  5. 事業セグメントの比較
  6. まとめ
  7. 志望動機として使えそうな点

有名子会社・関連会社の比較

2017年3月時点

表1

これを見ると博報堂は傘下や関連会社に広告代理店を多数抱えていることがわかります。

ちなみにADKが保有しているゴンゾはアニメーション制作会社です。

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事業規模の比較(単位:百万円)

電通

表3

博報堂

表2

ADK

表5

売上高・純利益順位(最新年度)

  • 1位:電通
  • 2位:博報堂
  • 3位:ADK

この順位自体は世間一般で言われていることと相違ありませんが、実際の数字を見てみると、各順位に大きな隔たりがあることがわかります。

1位の電通と2位の博報堂の間には売上・純利益ともに約4倍の開きが、そして電通と3位のADKの間には売上ベースで少なくとも10倍以上の開きがあります。

「全体の売上を見る限りでは電通が市場をほぼ独占しているのではないか」という声もどこからか聞こえてきそうですが、この数字には少しカラクリがあります。

ここで地域別の売上を見てみましょう。

(ADKのみ有報にて「国内での売上が90%以上を占めるので表記しません。」ということなので、上記の数字≒日本での数字と考えて下さい)

電通

表4

※海外売上比率3年平均:約64%

博報堂

表7

※海外売上比率3年平均:約6%

これを見ると電通と博報堂とでは「海外での売上比率」が全然違うことがわかります。

そして日本での売上を比較すると電通が勝っていることに変わりはないのですが、その割合が「 電通:博報堂 ≒ 1.5:1 」くらいになっています。

つまりは、「会社全体としては電通はグローバルに商売をしているので博報堂より圧倒的に大きく見えるが、日本国内に限って言えばその差はかなり小さくなる。」ということになります。

なお、ADKはそのままです。

安全性の比較

電通

表6

博報堂

表10

ADK

表8

流動比率順位(3年平均)

  • 1位:博報堂
  • 2位:ADK
  • 3位:電通

自己資本比率順位(3年平均)

  • 1位:ADK
  • 2位:博報堂
  • 3位:電通

博報堂とADKの各数字はそこまで大きく差はないのですが、電通のみ各数字が低いことがわかります。

つまり事業規模は大きいがそれに比例して借金も大きくなっている、といったところでしょう。

利益性の比較

電通

表15

博報堂

表11

ADK

表13

利益率順位(3年平均)

  • 1位:博報堂
  • 2位:電通
  • 3位:ADK

利益率はどっこいどっこいと言った感じです。

一言で言うと「どこもかしこも利益効率がものすごく悪い」です。

ネットFCF順位(3年平均)

  • 1位:電通
  • 2位:博報堂
  • 3位:ADK

売上・純利益の額では各順位に結構な差がついていましたが、この項目を見ると差こそあれども、売上・純利益のような差はついていないことがわかります。

実質設備投資額/営業CF順位(3年平均)

  • 1位:ADK
  • 2位:博報堂
  • 3位:電通

ネットFCFにそこまでの差が出ない要因はこの項目で、要するに「電通は儲かっているけど、その分設備や買収にお金を使い過ぎ」で、逆に「ADKはそこまで儲かっていない分、設備や買収を抑えている」ということになります。

なんならこの項目を見る限りでは事業規模が圧倒的に小さいADKが商売としては一番安定しているように見えます。

事業セグメントの比較

電通

表16

博報堂

表17

ADK

表18

この項目はサプライズがないので有報を少し離れて各企業のIRページの「決算説明資料orアニュアルレポート」から引っ張ってきた「業務区分別&業種別」の売上比率を見てみましょう。(比率が高い順に上から並べてあります。)

電通

表19

博報堂

表20

ADK

表21

各媒体別にまとめると以下のようになります。

表22

業務区分別に見ると世間ではテレビ離れがどうとか言われていますが、少なくとも広告代理店とテレビとはどこもべったりのようです。

その他の項目は3社ともそこまで差がないのですが、唯一大きく差があるのが博報堂のみ「インターネット・モバイル」部門の広告に力を入れているということです。

電通

表23

博報堂

表9

ADK

表12

各業種別にまとめると以下のようになります。

表14

3社の中で目立った差はないように見えます。

敢えてピックアップするならば3社とも「飲料・嗜好品」「情報・通信」の2業種で全体の売上の約20%を稼いでいること、ということくらいでしょうか。

まとめ

これまで見てきた3社の特徴をまとめると以下のようになると思います。

電通

  • ・事業規模ベースで圧倒的な強者
  • ・海外売上が全体の半分以上を占めるグローバル企業
  • ・国内だけに限ると2位の博報堂と競っている
  • ・設備や買収にお金をめちゃくちゃ注ぎ込んでいる
  • ・おそらくそのせいで借金が膨らんでいる

博報堂

  • ・全体の売上は電通に及ぶべくもないが、国内市場では割と頑張って競っている
  • ・従来の広告媒体に加え、インターネット・モバイル媒体の広告に力を入れている
  • ・3社の中では電通とADKと足して2で割った感じの数字とイメージ

ADK

  • ・国内大手広告代理店という括りでは3位に位置付けられているが、事業規模は他の2社と比べて圧倒的に小さい
  • ・だかしかし設備や買収にお金をそこまで使っておらず、3社の中で事業としては一番安定しているように見える
  • ・財務基盤も3社の中で一番安定しているように見える

といったところでしょうか。

数字を見ていく中で得た3社のなんとなくのイメージは以下のような感じです。

  • ・電通・・・豪快
  • ・博報堂・・・たまに豪快、普段はバランス
  • ・ADK・・・安定

志望動機として使えそうな点

電通

海外売上比率が半分以上を占めているという事実をベースにして、「海外で働きたいこと」をアピールする。

※お金の勘定とかそういった細かいことを考えず、良い意味でも悪い意味でも「豪快」な人がこの会社にはおそらく向いている。

博報堂

インターネット・モバイル広告での売上比率で電通に先行しているという事実と、頑張れば国内市場で電通を追い抜けるかもしれないという事実をベースにして、「インターネット・モバイル広告の分野で働いて、その分野での頑張りで国内市場で電通を追い抜きたいというモチベーションがあること」をアピールする。

※細かいことや派手なことのバランスが取れている、比較的「冷静な視点を持てる」人がこの会社にはおそらく向いている。

ADK

ネットFCFや財務基盤から事業の安定性があるという事実をベースにして、「安定・安心して働ける環境で、広告事業を頑張りたいこと」をアピールする。

※「派手さ」ではなく「安定」を求める人がこの会社にはおそらく向いている。

これまでまとめてきた事項は数字を元にした会社の実態ではありますが、より正確に実態を掴むためにも説明会で質問してみたり実際に社員の人にあったりして、調べた情報とズレていないかどうかを確認してみた上で、ESや面接で使用することをおすすめします。