はじめに
ここでは日本の大手ビール会社の
- ・サッポロホールディングス(以下:サッポロ)
- ・アサヒグループホールディングス(以下:アサヒ)
- ・キリンホールディングス(以下:キリン)
の3社を有価証券報告書に記載されている事柄から比較することで、イメージではなくその企業ひいてはその業界の「事実」の確認が出来ればと思っています。
なお「ビール会社と言えばサントリーもだろう」という声が聞こえてきそうですが、サントリーの清涼飲料水部門は上場しているのに対して酒類部門は上場しておらず、従ってデータがないのでここでは上記3社の比較ということにさせてもらってます。
目次
主要子会社・関連会社の比較
事業規模の比較(単位:百万円)
売上 順位
- 1位:アサヒ
- 2位:キリン
- 3位:サッポロ
純利益 順位
- 1位:キリン
- 2位:アサヒ
- 3位:サッポロ
売上においてはアサヒとキリンが激しく競り合っていますが、利益においてはキリンの圧勝です。
サッポロは事業規模全般において全く太刀打ち出来ていないことがわかります。
安全性の比較
流動比率 順位
- 1位:キリン
- 2位:アサヒ
- 3位:サッポロ
唯一キリンのみがマシな感じのようです。
とは言ってもかなりギリギリの資金繰りです。
他の2社がヒド過ぎるので相対的なものではありますが・・・。
自己資本比率 順位
- 1位:キリン
- 2位:アサヒ
- 3位:サッポロ
自己資本比率もキリンは割と健全な印象です。
逆にサッポロは全然お金を持っていないことがわかります。
利益性の比較
純利益率 順位
- 1位:キリン
- 2位:アサヒ
- 3位:サッポロ
またもや「キリンV.S.アサヒ」の構図でサッポロは完全に蚊帳の外です。
ネットFCF 順位
- 1位:キリン
- 2位:サッポロ
- 3位:アサヒ
しかしここで「キリンV.S.アサヒ」の構図が崩れ、キリンが抜け出ます。
そしていまのところ完敗中のサッポロがようやく上がってきました。
実質設備投資/営業CF 順位
- 1位:キリン
- 2位:サッポロ
- 3位:アサヒ
2位のサッポロの2分の1程度しかお金を使わずに済んでいるキリンに対して、ライバルのアサヒは過剰にお金を使い過ぎです。
在庫回転率 順位
- 1位:サッポロ
- 2位:アサヒ
- 3位:キリン
ただ在庫の回転ではキリンは他の2社に劣ります。
在庫管理と販売計画という意味ではサッポロとアサヒの方が上手いようです。
コスト&研究開発費の比較
販管費/売上 順位
- 1位:アサヒ
- 2位:サッポロ
- 3位:キリン
販管費とは正式には「販売費及び一般管理費」と言い、ざっくり言うと人件費・広告宣伝費・運送費などの商品を販売するのにかかった費用のことです。
3社間に目立った違いはないようです。
研究開発費/売上 順位
- 1位:アサヒ
- 2位:サッポロ
- 3位:キリン
キリンが最下位になっていますが、単純にアサヒとサッポロが研究開発費にお金をあまりかけていないだけにも見えます。
従業員1人あたりの売上&利益の比較
売上/従業員(単位:百万円) 順位
- 1位:アサヒ
- 2位:サッポロ
- 3位:キリン
ここまでのところでは割と優秀なキリンですが、個人技においては他の2社に劣ります。
逆に売上におけるサッポロの個人技はけっこうハイレベルなことがわかります。
営業利益/従業員(単位:百万円) 順位
- 1位:アサヒ
- 2位:キリン
- 3位:サッポロ
1人あたり営業利益/売上 順位
- 1位:キリン
- 2位:アサヒ
- 3位:サッポロ
ただ営業利益と利益率という観点で見てみるとサッポロの個人技は全然強くないことがわかります。
アサヒは一貫して個人技が強く、キリンは総合的に見ると中くらいの個人技の強さであることがわかります。
事業セグメントの比較
サッポロ
サッポロのセグメント構成はけっこう衝撃的です。
売上においてはイメージ通りに酒類が圧倒的なトップでそれ以外がちらほらという感じなのですが、利益に目を移してみると酒類に匹敵するほどの利益を不動産で挙げていることがわかります。
この不動産は「恵比寿ガーデンプレイス」や「サッポロファクトリー」がメインらしいのですが、利益率が他のセグメントと比べてズバ抜けて高いです。
アサヒ
この会社は割とイメージ通りの売上貢献度・利益貢献度です。
利益率に至ってもメインの酒類が一番高いので純粋にお酒の会社であると言ってよいでしょう。
キリン
売上・利益貢献度において各国の飲料事業がメインであることは明白なんですが、意外と「医薬・バイオケミカル」が利益の大きな部分を占めています。
この「医薬・バイオケミカル」は子会社の協和発酵キリンが担当している部分で会社全体にとっては非常に重要な子会社であることが確認出来ます。
まとめ
これまで見てきた 社の順位を「利益性」「コスト」「安全性」「チーム力」「個人技」の括りで下記します。
(総合点と平均が低ければ低いほどこの項目について「優れている」ということになります。)
利益性 総合順位
- 1位:アサヒ・キリン
- 2位:サッポロ
サッポロは置いておくとして、アサヒとキリンが同率1位です。
印象としては個人技の強さが順位の押し上げに貢献したアサヒと、利益効率の良さが順位の押し上げに貢献したキリンといった感じです。
コスト 総合順位
- 1位:アサヒ
- 2位:サッポロ
- 3位:キリン
設備投資ではお金を使いすぎなアサヒでしたが、他のコストは一番抑えているのもまたアサヒということでした。
安全性 総合順位
- 1位:キリン
- 2位:アサヒ
- 3位:サッポロ
割と単純ですが、財務的にはキリンが一番健全なことがわかります。
チーム力 総合順位
- 1位:キリン
- 2位:アサヒ
- 3位:サッポロ
なんやかんやでチームとしての力はキリンが一番強いようです。
アサヒも肉薄していますが、一歩及ばずといった感じです。
個人技 総合順位
- 1位:アサヒ
- 2位:キリン
- 3位:サッポロ
そして光るアサヒの個人技の圧倒的な強さ。
サッポロはチーム力も個人技も他の2社と比べて劣勢なようです。
総合順位
- 1位:アサヒ・キリン
- 2位:サッポロ
総合的にはアサヒとキリンが同率1位でフィニッシュです。
この2社はそれぞれ良い部分とダメな部分が割とハッキリと分かれていて、ダメな部分を良い部分が補っている形になっているようです。
各社の特徴をまとめると以下のようになります。
サッポロ
- 利益性:2位
- コスト:2位
- 安全性:3位
- チーム力:3位
- 個人技:3位
- 総合:2位
★割とまんべんなく他の2社に劣後している
アサヒ
- 利益性:1位
- コスト:1位
- 安全性:2位
- チーム力:2位
- 個人技:1位
- 総合:1位
★他の2社と比べて個人技が圧倒的に強い
キリン
- 利益性:1位
- コスト:3位
- 安全性:1位
- チーム力:1位
- 個人技:2位
- 総合:1位
★他の2社と比べて財務の健全性を含めたチーム力が強い
志望動機として使えそうな点
サッポロ
不動産事業の利益貢献度が圧倒的に高いこと
もはやビール会社ということで就活をするのではなく、不動産会社として就活をかけた方が良いように思います。
まず第一に競合が圧倒的に少ないことが想定されるので他の就活生との差別化が図れる上に、会社側の需要にピッタリと合っているからです。
アサヒ
売上に限れば、事業規模が一番大きい点
最大手の看板が欲しい人は一番向いていると思います。
個人技の強さが売りな点
今までデータを見てきた限りではこの会社の特徴は「個人技の強さ」です。
従って「優秀な人たちの中で揉まれて成長していきたい」と考えている人には最も向いている可能性が高いです。
キリン
チームとして最も優れている点
この会社の特徴は「個人技の強さはそこまででもないが、チームとしての完成度は3社の中で最も高い」ことです。
なんやかんやで大手ビール会社の中では財務的にも一番安定しているので、「優良企業で働きたい」と考えている人にとっては最も向いているかもしれません。
これまでまとめてきた事項は数字を元にした会社の実態ではありますが、より正確に実態を掴むためにも説明会で質問してみたり実際に社員の人に会ったりして、調べた情報とズレていないかどうかを確認してみた上で、ESや面接で使用することをおすすめします。