目次
1.はじめに
こんにちは。エントリーシート研究所の金野です。今年もイルミネーションの時期が迫ってきたことに対し恐怖を抱いています。イルミネーションに使われるのは電気ですが、今日はその電気と同じくらい私達の生活に欠かせないガス、特に人気の高い都市ガス業界の研究をしていきたいと思います。
2.都市ガスって何?
では、ガス全体についてみていきましょう。ガスを家庭や企業に供給する事業には、主にガス事業法(昭和 29 年(1954 年)公布)の対象となる一般ガス事業と簡易ガス事業、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和 42 年(1967 年)公布。)の対象となるLP ガス販売事業があります。
一般ガス事業と簡易(LP)ガス事業
まず、一般ガス事業とは、一般の需要に応じ導管によりガス、主に天然ガスを供給する事業のうち、簡易なガス発生設備(特定ガス発生設備)を用いて事業を行うことです。一般ガス事業は都市ガス事業とも呼ばれ、東京ガスなどがこれに当たります。
次に、簡易ガス事業とは、一般の需要に応じ、簡易なガス発生設備(特定ガス発生設備)でガスを発生させ(主にLPガス)、導管によってこれを供給する事業のことです。簡易ガス事業者とは、一の団地内におけるガスの供給地点の数が70以上のものを指します。LPガス販売事業とは、読んで字のごとく、LPガスを販売する事業の事です。
就活で言うガス会社とはいわゆる都市ガス事業の話
今回は一般ガス事業、いわゆる都市ガスに焦点を当てていきます。一般ガス事業は、ガス事業法に基づく許可を受けた一般ガス事業者が供給区域を設定し、その 供給区域内の利用者に対し導管によりガスを供給する事業のことです。都市部を中心に、”規模の経済性”(事業が大きくなればなるほど、平均の費用が下がり、利益が大きくなっていくこと)を活かし、一定規模の効率的な導管網を敷設することにより発達してきました。一般ガス事業は、導管などの設備投資コストが大きく、”規模の経済性”が働くことを主な要因として自然独占性を有しているため、一般ガス事業者にはその供給区域での独占供給を認められてきました。
現在都市ガス事業者は全国に206事業者いると言われており(2015年9月)、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの3社で一般ガス事業の販売量の7割以上を占めているようです。
3.もうチェックした?基本キーワード3選!
都市ガス業界を知る上で欠かせないキーワードが、「天然ガス」「自由化」「コージェネレーションシステム」です。
■天然ガス
都市ガスは液化天然ガス(LNG)を主な原料としています。LNGは、天然ガスを冷却した無色透明の液体です。冷やすと体積が大幅に減るという特性があるので、オーストラリアなどからタンカーで大量に輸送されます。日本のLNG輸入量は近年増加傾向にあり、2014年度のLNG輸入量内訳の約3割弱が都市ガス業界によるものです。不純物を含まないクリーンなエネルギーであると言われており、燃焼時に排出される二酸化炭素の量も少ないことも特徴です。(詳しくはこちら)。
■自由化
電力業界と同様に都市ガス業界にも自由化の波が押し寄せています。都市ガス業界でも段階的に自由化が進んできましたが、現在では、政府が以下4つの目標を掲げ、ガスシステム改革を行っています。
- 天然ガスの安定供給を確保する
- ガス料金を最大限抑制する
- 利用メニューの多様化と事業機会の拡大を図る
- 天然ガス利用方法の拡大を目指す
これにより、都市ガスを供給する事業者を私達が選べるようになったり、電力とのセット割など、多様なサービスを受けたりすることができるようになります。都市ガスを安全に、安く使えるようになればとっても便利ですよね。
また、政府は、自由化にあたり、都市ガス事業への新規参入の要件を緩和、異業種の参入を促すとしています。具体的には、都市ガス事業に新規参入する事業者への義務をなくす代わりに、ガスを送る導管を管理する会社が需給を適切に把握・修正するロードカーブ方式を導入して、ガス供給が滞らないようにするようです。これについて、既にガスを自前で持つ電力会社や石油元売りがガス販売に意欲を示しており、16年4月に全面自由化される電気とともに競争が激しくなりそうだと言われています(日本経済新聞2015年11月10日朝刊5頁)。そのため、都市ガス業界を受ける場合にも、電力・ガスの自由化に対し、どのような方針を立てているのか細かくチェックしましょう。
■ガスコージェネレーションシステム
都市ガスを燃料としてエンジン、タービン、燃料電池などで発電し、この時に生じる熱エネルギーも蒸気や温水に変えて利用する総合エネルギー効率の高いエネルギーシステムのことです。東日本大震災以降、ガスコージェネレーションシステムは「エネルギーセキュリティ設備」さらには「系統電力への供給電源」という分散型電源として社会的役割が期待されており、国のエネルギー政策でも重要な位置づけになっています。
このほかにも、「エネファーム」「スマートエネルギーネットワーク」「水素社会」といったものも重要なキーワードですので、興味のある方は調べてみてくださいね。
4.大手3社で比べてみました
以下では都市ガス大手3社を比較していきたいと思います。なお、平均年収については、年収ラボを参考にしました。
■東京ガス
- 資本金:1418億(2015年3月31日現在)
- 社員数:7,979人(単独。2015年3月31日現在)
- 売上高:2兆2,925億円(2014年度)
- 平均年収:680万円
- 福利厚生:各種社会保険、各種貯蓄制度、融資制度、共済会、社員持株会、独身寮、家族寮、総合グラウンドなど。
■大阪ガス
- 資本金:1,321億6,666万円
- 社員数: 5,866名(単独。執行役員・理事・嘱託含み、出向者除く。2015年3月31日現在)
- 売上高:1兆2,518億3500万円(2014年度)
- 平均年収:672万円
- 福利厚生:社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険等)、諸制度(確定拠出年金制度、従業員持株制度、、育児休業制度、介護休業制度、ボランティア休業制度等)、施設(独身寮、健康開発センター、研修施設、体育館、グラウンド)あり。
■東邦ガス
- 資本金:330億7,200万円
- 社員数:2,860名
- 売上高:5億6364億円(2014)
- 平均年収:608万円
- 福利厚生:各種社会保険完備、財形貯蓄、カフェテリアプラン、診療所などあり。
以上から、
- ・福利厚生が整っている
- ・売上げが年収に比例すること
- ・3社の寡占市場といっても、業界3位の東邦ガスと業界1位の東京ガスとでは売上げに約4倍弱の差があること
がわかります。大手3社に限って言えば、福利厚生も整っており、どの会社も働きやすそうですね。そのため、もし地域に拘りがないのであれば、お給料のよい、比較的大きな会社を目指した方がいいのかな、と個人的に思います。
5.まとめ
いかがでしたか?都市ガスは大手3社の寡占市場ですので、安定しているイメージだった人も多いと思います。しかし、近年は自由化も予定されているので、「このままじゃいけない!」と各社様々な動きを見せています。そのような変化の中に身を置けるという意味では、電力と同様、インフラの中では刺激的な業界かもしれませんね。また、都市ガス業界を受ける人は電力業界を受ける人も多いと思いますので、その差別化(なぜ電力じゃなくてガスか)をしっかりして選考に臨みましょう。