はじめに
ここでは日本の大手ネット証券の
- ・SBIホールディングス (以下:SBI)
- ・マネックスグループ(以下:マネックス)
- ・松井証券(以下:松井)
の3社を有価証券報告書に記載されている事柄から比較することで、イメージではなくその企業ひいてはその業界の「事実」の確認が出来ればと思っています。
目次
主要子会社・関連会社の比較
事業規模の比較(単位:百万円)
売上 順位
- 1位:SBI
- 2位:マネックス
- 3位:松井
純利益 順位
- 1位:SBI
- 2位:松井
- 3位:マネックス
売上高においても純利益においてもSBIが圧倒的だということがわかります。
そして売上高においてはマネックスと松井は拮抗していますが、純利益においては松井が大きくリードしています。
安全性の比較
※流動比率に関しては連結での記載が無かったので、今回は単体で記載します。
流動比率 順位
- 1位:松井
- 2位:マネックス
- 3位:SBI
松井が100%を超えていますが、各社とも短期の資金繰りは危ういバランスの元に成り立っているようです。
自己資本比率 順位
- 1位:松井
- 2位:SBI
- 3位:マネックス
そして自己資本比率も総じて低いです。
順位はついていますが、各社間にそこまでの差はないように思えます。
利益性の比較
※在庫が存在しないため、在庫回転率の記載は今回は省略します。
純利益率 順位
- 1位:松井
- 2位:SBI
- 3位:マネックス
松井の純利益率はちょっとどうかしてるほど高いです。
こんなに高い純利益率はあまりお目にかかれません。
ネットFCF 順位
- 1位:松井
- 2位:マネックス
- 3位:SBI
ネットFCFは松井のみプラスです。
そしてマネックスとSBIのネットFCFはかなり不安になるほどの数値を記録していますが、SBIに関しては割とまともな理由があります。
というのもSBIのネットFCFのマイナスの大きな要因として
「受取利息及び受取配当金が決算時点でまだ入って来ていないこと」
そして
「営業債権及びその他の債権(売掛金)による収入が決算時点でまだ入って来ていないこと」
この2つがあるからです。
つまりは「受取利息及び受取配当金」に関しては収入として確定しているために損益計算書には反映させているけれども決算時点ではまだ現金が会社に入ってきていないので、営業CFに記載する会計上のルールとしてはマイナスとして記載されるということです。
「営業債権及びその他の債権(売掛金)」に関しても上記とだいたい同じで、収入として入ってくることが確定しているけれども、支払い時期の問題で決算時点ではまだ現金が会社に入ってきていないので営業CFに記載する会計上のルールとしてはマイナスとして記載されるということです。
実質設備投資/営業CF 順位
- 1位:松井
- 2位:SBI
- 3位:マネックス
SBIとマネックスに関しては営業CFのマイナスの大きさが響いて「設備投資し過ぎ」な状態に見えます。
しかし会計上のルールの問題でそう見えているだけで実際はそこまで過剰に設備投資しているワケではないかもしれません。
コスト&研究開発費の比較
販管費/売上 順位
- 1位:SBI
- 2位:松井
- 3位:マネックス
マネックスは販管費にお金をかけまくっているようです。
研究開発費/売上 順位
- 1位:マネックス・松井
- 2位:SBI
マネックスと松井に関してはそもそも研究開発費を計上していないのですが、SBIのみ研究開発費をしっかりと計上しています。
その理由はSBIは研究開発費を「証券事業」に投下しているのではなく、子会社の「バイオ関連事業」に投下しているからです。
従業員1人あたりの売上&利益の比較
売上/従業員(単位:百万円) 順位
- 1位:松井
- 2位:マネックス
- 3位:SBI
マネックスとSBIが横並びですが、松井のみ飛び抜けた数値を記録しています。
営業利益/従業員(単位:百万円) 順位
- 1位:松井
- 2位:SBI
- 3位:マネックス
少し序列がつきましたが、依然として松井の強さが際立っています。
1人あたり営業利益/売上 順位
- 1位:松井
- 2位:SBI
- 3位:マネックス
さきの項目で松井の「異次元の純利益率」を確認しましたが、それは「異次元の営業利益率」に支えられていることが確認出来ます。
時に純利益率は本業とはあまり関係のない「受取配当金」や「特別利益」などで営業利益率より高くなったりします。
なので純利益率だけを見ても本業の効率が良いのか副業の効率が良いのか判断が難しいのですが、松井に関してはちゃんと「営業利益率>純利益率」となっているのでそもそも本業の効率がめちゃくちゃに良いということになります。
事業セグメントの比較
SBI
稼ぎ頭に関しては実態とイメージではあまり差がないこの会社ですが、研究開発費のところでも触れた「バイオ関連」がセグメントとして存在しており、更に全体の業績の足を大きく引っ張っているというのが現状のようです。
マネックス
いちおう海外にも進出しているようですが、あまり上手く行っていないようです。
ただ2018年度には「米国」では利益を計上出来ているので、少しずつ改善の兆しは見えてきているのかもしれません。
松井
なんの面白みもないセグメント情報ですが、さきも触れた通りに異次元の営業利益率の高さが目立っています。
ちなみに下記は各社の海外売上比率(3年平均)です。
SBIは海外進出をしてはいますが、どちらかと言うと割とドメスティックな会社のようです。
まとめ
これまで見てきた 社の順位を「利益性」「コスト」「安全性」「チーム力」「個人技」の括りで下記します。
※総合点と平均が低ければ低いほど各項目について「優れている」ということになります。
※ご参考までに偏差値も併記しておきます。偏差値の平均は50です。
※平均以下の項目を赤字で示しています。
利益性 総合順位
- 1位:松井(偏差値:62)
- 2位:SBI(偏差値:50)
- 3位:マネックス(偏差値:38)
売上高と純利益の規模ではSBIの一人勝ちなのですが、効率性という面においては全ての項目で1位を獲得した松井が総合トップに立っています。
コスト 総合順位
- 1位:松井(偏差値:61)
- 2位:SBI(偏差値:53)
- 3位:マネックス(偏差値:37)
コスト面においてもそれぞれにまんべんなく平均以上の順位を獲得した松井がトップです。
マネックスは3社の中ではけっこう高コスト体質のようです。
安全性 総合順位
- 1位:松井(偏差値:64)
- 2位:SBI(偏差値:43)
- 2位:マネックス(偏差値:43)
安全性でもぶっちぎりで松井がトップに立っています。今のところ敵なしです。
チーム力 総合順位
- 1位:SBI(偏差値:62)
- 2位:松井(偏差値:50)
- 3位:マネックス(偏差値:38)
ただチーム力に関しては圧倒的な事業規模のおかげでSBIがトップです。
そしていまのところ良いところなしのマネックスです。
個人技 総合順位
- 1位:松井(偏差値:64)
- 2位:SBI(偏差値:45)
- 3位:マネックス(偏差値:41)
個人技は諸々の圧倒的な効率性を見せつけた松井がトップです。
マネックスはSBIに肉薄していますが、やはり微妙です。
総合順位
- 1位:松井(偏差値:63)
- 2位:SBI(偏差値:49)
- 3位:マネックス(偏差値:38)
総合順位では事業規模以外は高順位を連発した松井がトップに立っています。
逆にSBIは事業規模は圧倒的なのですが全般的には平均的なようです。
マネックスは3社の中では割と全般的に劣後しています。
各社の特徴をまとめると以下のようになります。
- 強み:事業規模の大きさ
- 弱み:バイオ関連事業
- 強み:強いて言えば海外展開が一番進んでいること
- 弱み:3社の中では全般的に劣後していること
- 強み:圧倒的な事業効率の良さ、個人技の強さ
- 弱み:事業規模が小さいこと
志望動機として使えそうな点
SBI
事業規模が圧倒的に大きい点
「最大手の看板を背負って働きたい」という人にはここ以外の選択肢はあり得ないと思います。
マネックス
海外展開が割と進んでいる点
3社の中では数字だけを見るとあらゆる面で見劣りがするので、他の2社を差し置て取り立ててこの会社を志望する理由はあまり無いように思えます。
しかし唯一「海外進出」に関しては他の2社に先行しています。
なので「海外での事業に携わりたい」と考えている人にとっては最も向いているかもしれません。
松井
大手ネット証券の中では超優良企業である点
事業規模ではSBIに及ぶべくもありませんが、その事業の効率性は3社の中では飛び抜けて高く、他の色々な面でも優秀であることを確認してきました。
なので「大手ネット証券の中でも優良企業で働きたい」という人には最も向いているかもしれません。
これまでまとめてきた事項は数字を元にした会社の実態ではありますが、より正確に実態を掴むためにも説明会で質問してみたり実際に社員の人に会ったりして、調べた情報とズレていないかどうかを確認してみた上で、ESや面接で使用することをおすすめします。