企業の実態を丸裸!~有価証券報告書を使った企業研究~ 「楽天編」

※本サイトでは、プロモーションが含まれている場合があります。
IT業界
2018年02月15日
マウス

はじめに

この記事では「就活生=投資家」「就職=自分という資本を企業に投資する」と定義した上で、いわゆる就活生に人気の上場企業を「有価証券報告書」という上場企業なら毎年提出しなければならない成績表に書かれている「数字」という客観的事実のみで見てみようとするものです。

なのでここに書かれていることは、あくまで企業に対する直感を補足するものないしは裏付けるものとして捉え、就活に役立ててもらいたいと思っています。

では就活人気企業として、楽天を取り上げます。

目次

  1. どんな仕事の種類があるのか
  2. どこの国で仕事をしているのか
  3. 会社の安定性を測る指標
  4. 会社の成長性を測る指標
  5. 投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い
  6. まとめ
  7. ES・面接での想定訴求ポイント

楽天はいったいどんな商売をしているのでしょうか?

最新の有価証券報告書(2017年3月提出分)から抜粋すると、主に2つの事業に分けることが出来ます。

①インターネットサービス

  • ・楽天市場
  • ・楽天ブックス
  • ・楽天トラベル
  • ・楽天モバイル
  • ・ケンコーコム
  • ・Kobo
  • ・東北楽天ゴールデンイーグルス
  • ・VIBERなど

②FinTech

  • ・楽天カード
  • ・楽天銀行
  • ・楽天証券
  • ・楽天生命保険
スポンサーリンク就活の証明写真を撮るのにおすすめの写真館の選び方とまとめ
スポンサーリンク就活の証明写真を撮るのにおすすめの写真館の選び方とまとめ

どんな仕事の種類があるのか

有価証券報告書によると、各セグメントの売上割合は以下の通り

表8

3年間平均で売上に占める割合が大きいのは上から順に

1位:その他
2位:楽天市場&楽天トラベル
3位:楽天カード
4位:楽天銀行

ということになっています。(利益についてはセグメント毎に開示していないのでここには記載しません。)

楽天市場と楽天トラベルで全体の売上の約25%を占めているのは世間一般のイメージ通りだと思うのですが、それに追随するのが楽天カード楽天銀行だというのはあまりイメージがないのではないかと思います。

この売上構成を見ると楽天は確かにEコマースの会社の要素はあるけれども、ただそれだけではなく、どちらかというと

「Eコマース+金融の会社」

といった表現の方が適切に思います。

ここで2016年度の単体の従業員数を見てみましょう。

表10

セグメント売上と従業員数を比較すると、

売上の大部分を占める楽天カードや楽天銀行などのFinTech部門は、かなりの少人数で管理および運営がされている

ということがわかります。

(ちなみに連結での従業員数は「インターネットサービス:9,893人」で「FinTech:2,751人」です。それで同程度の売上を挙げるので、どちらにせよ少数精鋭だと思います。)

どこの国で仕事をしているのか

表9

直近3年間の順位付けをすると、

1位:日本
2位:米州
3位:欧州
4位:その他

会社の安定性を測る指標

※普段は連結での流動資産を記載しているのですが、楽天が銀行業や生命保険業を行っているために連結での流動資産を有報で開示していないので、ここには記載しません。

A:自己資本比率
B:CF計算書

A:自己資本比率

これは「純資産(会社が保有している返さなくていいお金)」を「総資産(会社が保有している純資産や借金を含めた全てのお金)」で割ったものです。

これでわかるのは

会社が保有している全ての資産(現金、建物、商品在庫など)の内、何割を返さなくてもいいお金でまかなっているのか

ということです。

具体的な数値で見てみましょう。

グループ全体連結

表12

あんまり高くないですね。

しかし就活生のみなさんが就職するのは「楽天本体」なので、本体のみの数字を見てみましょう。

単体

表11

楽天本体の数字を見ると流動資産はちょっとどうかと思うほど低く見えます。

この理由は「預かり金」と「ポイント引当金」が流動負債の大部分を占めているためです。

つまり、会計処理上の理由で「流動負債」として計上しているため、厳密に言うと1年以内に必ず相手方に支払わなければならない類のお金ではないものです。

この2つの項目を除くと流動比率は100%を超えるので短期の資金繰りはそんなに問題ないように思えます。

そして自己資本比率は本体だけだと50%を超えているので財務的には割と健全と言えます。

B:CF計算書

CF計算書はどうなっているかというと、

表3

純利益と営業CFの乖離はそこまででもないですが、気になるのは投資CFと財務CFです。

結論から言うと、おそらくこの会社は

近年「積極的な攻めの経営」をしている

ものと思われます。

理由は営業CFを上回る額の投資CFによる支出とそれをカバーしているであろう財務CFの大幅なプラスです。

会社の成長性を測る指標

表2

売上高は順調に増えていってますが、逆に純利益は段々と下がっていっています。

この原因は規模やビジネスチャンスの拡大を優先し、利益を犠牲にしている近年の経営方針によるものと思われます。

ちなみに内訳を見てみると、

表5

これを見ると利益の減少の要因はインターネットサービス部門の利益の減少にあるようです。

FinTech部門は売上・利益ともに順調に伸びていっていることが確認出来ます。

投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い

A:ROE(自己資本利益率)
B:FCF(フリーキャッシュフロー)
C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

A:ROE(自己資本利益率)

ROE、つまり「投資家から預かったお金を使っていかに効率良く利益を出しているか」という観点で企業をチェックする場合、全世界的に見て

5%未満=最悪
5%=微妙に悪い
10%=普通
15%=まあまあ良い
20%以上=素晴らしい

となります。

ではROEの直近3年間の推移を見てみましょう。

表4

ここでも「質の経営」は後回しになっていることが確認出来ます。

そして利益効率は「微妙に悪い」部類に入ります。

B:FCF(フリーキャッシュフロー)

表7

これを見ると実質設備投資による支出によって毎年1,000億円以上のお金が出て行っていることがわかります。

それに伴ってネットFCFも毎年マイナスになっていることから近年では完全に分を超えた投資を行っていることが確認出来ます。

C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

表6

リーマンショック時の経営成績を見る限り、この会社は不況には強く影響を受けるということがわかります。

特に2009年度の純利益と営業CFの乖離がひどいのが目立つのは経営としては頂けません。

まとめ

これまで楽天を数字で見てきたことをまとめると、

  • ・イメージは「Eコマースの会社」だが、実態は「Eコマース+金融の会社」
  • ・借金多め
  • ・近年は積極的な攻めの経営を行っている
  • ・景気の影響を強く受ける

ということになるでしょう。

ES・面接での想定訴求ポイント

ここでは有価証券報告書で調べてきたことを実際のESや面接でどうやって活かしていけるか、という点に絞って想定される訴求ポイントを挙げます。

FinTech部門(金融部門)で働きたいことをアピールする

この会社は成り立ちこそEコマースの会社ですが、現在はそれと同程度の売上と利益を金融から稼ぎ出しています。

この事実を踏まえた上で競合との差別化を狙う意味でもこの金融部門で働きたいことをアピールします。

その中でも狙い目は

  • ・「楽天銀行」
  • ・「楽天生命保険」
  • ・「楽天証券」

の3つ、つまり楽天カード以外の金融部門です。

理由は

楽天カードはCMをバンバン打っているので金融部門の中では知名度があり、そこを狙ってくる競合も多いと想定されるため

です。

あくまで推測なのですが、この金融部門に配属されてメインで行う仕事は「マーケティング」だと思います。

なぜならこの金融部門は全て「インターネット専業」であるため、一人一人に対しての対面営業はほとんど行っていないからです。

そういう意味では

「マーケティングの仕事がしたい人」や「金融関係の仕事がしたい人」などがこの会社を志望するのが会社の需要を満たす上でも合理的な選択

なのかもしれません。

有価証券報告書で調べたことから使えそうなところを捻り出すとしたら、上記のようになると思います。

有価証券報告書だけでなく、企業の「IR情報」という投資家に向けて公表している情報には業績や今後の方針などをわかりやすくパワーポイントでまとめたものもあるので、興味を持たれた方はそちらも見てみると良いかもしれません。