就活生の為の経営用語解説~CF計算書編~

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企業研究
2023年02月15日
電卓とお金

はじめに

ここでは就活生のみなさんが有価証券報告書に記載されている実際の数字を元にして企業研究をする時に重要な用語について、出来るだけ噛み砕いて説明していこうと思います。

今回は会社の安定性及び成長に関わる指標の「CF計算書」を説明して行きます。

目次

  1. CF計算書とは
  2. なぜCF計算書が重要なのか
  3. 逆の場合
  4. まとめ
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CF計算書とは

まず読み方ですが、正式にはCash Flow(キャッシュ・フロー)計算書と読みます。

この「Cash Flow」ですが、日本語に直訳すると「お金の流れ」という意味になるので、このCF計算書は「お金の流れの計算書」と読み換えることも出来ます。

CF計算書をカンタンに言うと、

「企業が行った営業・投資・財務活動それぞれの実際のお金の出入りを記したもの」

となります。

これは上場企業が公表しなければならない決算書の一つで、損益計算書(売上や純利益を記したもの)の補足として一般的には位置付けられています。

中に何が書いてあることは主に「営業CF」「投資CF」「財務CF」の3つです。

それぞれに記されていることをざっくり挙げると、

営業CF

  • ・純利益額
  • ・ツケ払いの増減額
  • ・未払金の増減額
  • ・減価償却費など

投資CF

  • ・設備で使った金額
  • ・投資で使った金額
  • ・買収に使った金額
  • ・子会社などを売却して入ってきた金額
  • ・他社への貸し付けの金額・回収金額
  • ・預金金額・預金の引き出し金額など

財務CF

  • ・借り入れた金額・借金を返済した金額
  • ・利子の支払い金額
  • ・株式を発行して得た金額
  • ・配当の支払い金額など

になります。

「実際のお金の出入りを記したもの」という表現が引っかかると思うのですが、これが意味するのは

企業の損益計算書に記してある純利益はあくまで「会計のルールに則った」利益であって、「純利益=手元に残った自由に使えるお金ではない」

ということです。

では次項から詳しく見ていきましょう。

なぜCF計算書が重要なのか

さきほど「純利益=手元に残った自由に使えるお金ではない」と言いましたが、これがCF計算書が企業を見る上で重要な理由の主なものとなります。

ここからは具体的にCF計算書を見ながら話をしていきたいと思います。

下記は東証上場企業で直近約10年間連続増収増益のプレサンスコーポレーションという投資用マンションの開発・販売をしている会社の2017年度3月の営業CFの主要な数字を抜粋したものです。

表2

結論から言うと、

この会社は売り上げと純利益を見ると超がつく優良企業ですが、CF計算書を見ると超がつくほど経営的に危険な会社である

と言えます。

ではなぜ危険なのか?

それは税引き後純利益が大幅なプラスであるにも関わらず、営業活動によるCF合計が大幅なマイナスになっているからです。

言い換えると、

「帳簿上の純利益は105億円なので帳簿上はこの会社に自由に使えるお金が105億円入ってきているということになっているが、実際においては手持ちの資金から254億円が流出している。」

ということになります。

この会社におけるその主たる原因は

「たな卸資産の増減額」

にあります。

たな卸資産とは「販売していない商品在庫」のことです。

この項目がプラスになっているのであれば在庫は前年から減っているということになり、逆にマイナスになっているのであれば在庫が前年から増えているということになります。

表にあるこの項目の数字を見てみると、前年度から在庫が405億円増えている(つまり業者に405億円を支払っている)ことがわかります。投資用マンションの開発・販売をしている会社なので、この場合の在庫は「マンション」ということになります。

要約すると、

この会社は105億円のキャッシュを稼ぎ出してはいるものの、その額を大幅に超えた405億円をマンションの開発に使っている

ということです。

ではなぜこのようなことが起こるのでしょうか。

その理由は損益計算書の記入ルールにあります。

損益計算書上、販売したものは販売代金がまだ全額入金がされていなくても販売した時点でプラス要素として売上にカウントし、仕入れたものは売れた分だけマイナス要素として費用にカウントします。

そして売れ残りに関してはマイナス要素としてその年の費用にカウントしない、ということがこの会社が純利益を出している理由です。

もし「売れ残りもマイナス要素として費用にカウントする」となっていたならば、この会社は約250億円の損失を出したことになりますが、現実の「会計のルール上」はそうなることはないので新聞などで騒ぎたてられることはありません。

これが「売り上げと純利益を見ると超がつく優良企業だが、CF計算書を見ると超がつくほど経営的に危険な会社である」と言える大きな理由です。

更に投資CFの項目を見ると以下のようになっています。(主要部分抜粋)

表4

カンタンに言うと

「自社の設備や企業買収などで約69億円を使っている」

ということになります。

ここまで営業と投資で支払った金額の合計は約323億円(=254億円+69億円)になっていますが、どこからそのお金が出てきたのでしょうか?

そこで最後の項目、財務CFの出番です。(主要部分抜粋)

表3

説明すると

短期借入金を約7億円、長期借入金を約223億円の合計約230億円を返済したのと同時に長期借入金を約644億円借りて、配当を約14億円株主に支払ったので、全てを合計すると結局は約400億円を借りてきた、

ということになります。

これでさきほどの謎の323億円の出所が判明しました。つまりは

借金でまかなっていた

ということです。

以上に述べてきたことがCF計算書の見方と重要な理由です。

この会社の場合は、マンションが売れ続けることによって銀行がお金を貸し続けてくれるのであれば資金は回りますが、そのどちらか一つでもストップした場合には企業経営と存続に黄信号ないしは赤信号が急に灯ることになりそうです。

逆の場合

では逆の場合、つまりは「損益計算書を見ると全然ダメだが、CF計算書を見ると超優良企業」となる場合はどうなるのかを見てみましょう。

ここではその企業の典型例として、アメリカ企業になりますがアマゾンを取り上げます。

以下は2014年度12月のアマゾンのCF計算書の主要部分を抜粋したものです。

まずは営業CFです。

表6

アマゾンの損益は2億4,100万ドル(1ドル=100円換算で241億円)の純損失で赤字なのに対して、営業CFの最終的な数字は68億4,200万ドル(=6,842億円)の黒字になっています。

これは「減価償却費」と「株式報酬費用」の影響が大きいです。

減価償却費は普段全く耳慣れない言葉だと思いますが、これは「設備投資などで既に支払った費用はその支払った年に一括ではなく、数年間に分けて費用として計上しなければならない」というこれまた「会計のルール上」出てくる費用のことです。

つまり、

アマゾンの場合は設備投資などで使った金額の支払いはもう済んでいるが、「会計のルール上」で4,746億円を費用として計上しているだけで、実際には手持ちの資金から4,746億円が流出している訳ではない

ということです。

そして株式報酬費用も実際には1,497億円が手持ちから流出している訳ではないということを示しています。

なぜならこの株式報酬費用にはもらえる条件が付いていて、だいたいは「○○年までに株価が××ドルになったら発行可能」「○○年までに純利益が××ドルを達成したら発行可能」という形になっているからです。

つまりは費用としてとりあえず計上してあるもののまだ実際に支払いはしていなくて、更に言えば条件を達成しなかったら支払いすらしなくて良い、ということになります。

表5

そして投資CFでは合計5,065億円を使っていますが、この金額は営業CFで得た6,842億円の内側で収まっているので健全な投資をしていると言えるでしょう。

表1

結局は4,432億円の借金をしていますが、これはおそらく資金繰りに困ってというよりは

「今後の投資に向けて低金利のうちにお金を借りておこう」といった類のもの

と思われます。あくまで推測ですが。

このようにCF計算書を読むことで赤字でも全然大丈夫、というよりものすごく優良な企業であるということが見えてくる例もあるので、気になる企業がもし赤字ならば調べてみると良いかもしれません。

まとめ

ポイントをざっくりとまとめると以下のようになります。

  • ・営業CFの金額が純利益の金額より大きい=見た目よりも優良企業の可能性大
  • ・営業CFの金額が純利益の金額より小さい=見た目よりも危ない企業の可能性大
  • ・営業CFの金額と純利益の金額がだいたい同じ=見たまんまの企業の可能性大

数字を見て判断するのも大事ですが、もっと深く企業研究をするのであれば「ではなぜそのようになるのか」を考えると良いかもしれません。

さきほどのプレサンスコーポレーションでの例ですが、CF計算書上の実態は危なそうな企業ということになりましたが、マンションが継続的に売れ続ければ何も問題ないとも言えます。

特にこの会社は「頑張れば20代で年収1,000万円も可能」などと言われている会社なので、

要は営業マンが優秀であれば市況に関係なくマンションが売れて、他の人よりも高い年収がもらえ続ける可能性が高い、

ということになります。

そういうことを考えるのは少し複雑で手間もかかりますが、企業研究を徹底的にやるのであればそこまでやってみるのもアリなのではと思います。

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