企業の実態を丸裸!~有価証券報告書を使った企業研究~ 「NTT編」

カテゴリ:携帯・通信業界
ES研究所 2018年08月22日

電子部品

はじめに

この記事では「就活生=投資家」「就職=自分という資本を企業に投資する」と定義した上で、就活生に人気がありそうな上場企業を「有価証券報告書」という上場企業なら毎年提出しなければならない成績表に書かれている「数字」という客観的事実のみで見てみようとするものです。

なのでここに書かれていることは、あくまで企業に対する直感を補足するものないしは裏付けるものとして捉え、就活に役立ててもらいたいと思っています。

では就活人気企業として、NTTを取り上げます。

目次

  1. どんな仕事の種類があるのか
  2. どこの国で仕事をしているのか
  3. 会社の安定性を測る指標
  4. 会社の成長性を測る指標
  5. 投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い
  6. まとめ
  7. ES・面接での想定訴求ポイント

NTTはいったいどんな商売をしているのでしょうか?

最新の有価証券報告書から抜粋すると、5つの事業に分けることが出来ます。

地域通信
国内電気通信事業における県内通信サービスの提供及びそれに付帯する事業
(NTT東日本、NTT西日本等)
長距離・国際通信
国内電気通信事業における県間通信サービス、国際通信事業、ソリューション事業及びそれに関連する事業
(NTTコミュニケーションズ等)
移動通信
携帯電話事業及びそれに関連する事業
(NTTドコモ等)
データ通信
ネットワークシステムサービス、システムインテグレーション等の事業
(NTTデータ等)
その他
日本電信電話株式会社の事業及び不動産事業、金融事業、建築・電力事業、システム開発事業、先端技術開発事業等
(NTT都市開発、NTTファイナンス、NTTファシリティーズ等)
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どんな仕事の種類があるのか

各セグメントの直近3年間の平均数値は以下になります。

表7

売上 順位

  • 1位:移動通信
  • 2位:地域通信
  • 3位:長距離・国際通信
  • 4位:データ通信
  • 5位:その他

「移動通信」が売上の約40%を占めていることから子会社のNTTドコモの貢献度の高さが伺い知れます。

ただ「地域通信」と「長距離・国際通信」を足し合わせると「移動通信」に匹敵する規模になるので売上においてはNTTドコモに依存しているという訳ではなさそうです。

利益 順位

  • 1位:移動通信
  • 2位:地域通信
  • 3位:データ通信
  • 4位:長距離・国際通信
  • 5位:その他

しかし営業利益においては「移動通信」にかなり依存していることがわかります。

他の事業では唯一「地域通信」が20%を超える利益貢献度を示していますが、それでも「移動通信」には遠く及びません。

研究開発費 順位(少ない順)

  • 1位:データ通信
  • 2位:長距離・国際通信
  • 3位:移動通信
  • 4位:地域通信
  • 5位:その他

設備投資額 順位(少ない順)

  • 1位:その他
  • 2位:データ通信
  • 3位:長距離・国際通信
  • 4位:地域通信
  • 5位:移動通信

メイン事業である「移動通信」と「地域通信」にはそれなりに研究開発費と設備投資費を投入しているようです。

「データ通信」と「長距離・国際通信」は売上の割には研究開発費と設備投資費がそこまでかかっていないようです。

順位をまとめると以下のようになります。

表3


各数値の偏差値を基準として順位を算出しています。

偏差値の平均は50です。


下位項目を赤字で示しています。

セグメント 総合順位

  • 1位:移動通信(偏差値:62)
  • 2位:データ通信(偏差値:57)
  • 3位:長距離・国際通信(偏差値:55)
  • 4位:地域通信(偏差値:40)
  • 5位:その他(偏差値:36)

「移動通信」がトップなのは順当として、「地域通信」が研究開発費と設備投資費の影響でかなり順位を落としています。

しかも事業のクオリティ的には割と悪い感じです。

そして意外にも「データ通信」と「長距離・国際通信」が順位を大きく上げており、「データ通信」にいたっては売上と利益の貢献度はそこまで高くないにも関わらず、かかるコストの関係で「移動通信」に匹敵する事業のクオリティを有するということになっています。

次に従業員1人あたりの売上と利益について見てみましょう。

表12

※売上/従業員数・利益/従業員数の単位は百万円

売上/従業員数 順位

  • 1位:移動通信
  • 2位:長距離・国際通信
  • 3位:地域通信
  • 4位:その他
  • 5位:データ通信

ここでも「移動通信」は圧倒的です。

「地域通信」と「長距離・国際通信」が同じくらいで、「データ通信」と「その他」も同じくらいです。

利益/従業員数 順位

  • 1位:移動通信
  • 2位:地域通信
  • 3位:その他
  • 4位:長距離・国際通信
  • 5位:データ通信

またもや「移動通信」の圧勝で、他の事業を全く寄せ付けません。

1人あたり利益/売上 順位

  • 1位:移動通信
  • 2位:その他
  • 3位:地域通信
  • 4位:データ通信
  • 5位:長距離・国際通信

ただ営業利益率となると「移動通信」は1位ではあるのですが、「その他」と「地域通信」もそれなりの効率性を見せていることがわかります。

順位をまとめると以下のようになります。

表6

各数値の偏差値を基準として順位を算出しています。

偏差値の平均は50です。


下位項目を赤字で示しています。

従業員1人あたり 総合順位

  • 1位:移動通信(偏差値:69)
  • 2位:その他(偏差値:49)
  • 3位:地域通信(偏差値:48)
  • 4位:長距離・国際通信(偏差値:42.26)
  • 5位:データ通信(偏差値:42.08)

(参考)

セグメント 総合順位

  • 1位:移動通信(偏差値:62)
  • 2位:データ通信(偏差値:57)
  • 3位:長距離・国際通信(偏差値:55)
  • 4位:地域通信(偏差値:40)
  • 5位:その他(偏差値:36)

個人技総合でもやはり「移動通信」が圧倒的な力の差を見せつけています。

そして「その他」が順位を上げてきて2位になっており、逆にチーム力では上位ランカーだった「長距離・国際通信」と「データ通信」は下位に沈んでいます。

ただ2位~5位まで個人技の強さを示す数値はそこまでの差はないことから、少なくとも「長距離・国際通信」と「データ通信」に関しては個人技の弱さを投下人員数の多さとコスト効率の良さでカバーしているということが推測出来ます。

どこの国で仕事をしているのか

表2

地域別 順位

  • 1位:国内
  • 2位:海外

なんとなくイメージ通りでドメスティックな企業のようです。

会社の安定性を測る指標

  • A:流動比率&自己資本比率
  • B:CF計算書

A:流動比率&自己資本比率

表11

流動比率・自己資本比率ともにフツーな数値です。

重厚長大企業の代表格みたいな企業にしては少しもの足りない数値な気もします。

B:CF計算書

表10

※単位は百万円

投資CFでお金をかなり使っているようですが、概して堅実な経営をしていると言ってよいでしょう。

特に純利益を大幅に上回る営業CF(2兆円強)はかなり魅力的な数値です。

会社の成長性を測る指標

表9

※単位は百万円

売上高が11兆円を超えている超がつく程の大企業ですが、意外にも近年では毎年売上高と純利益を伸ばしていっており、成長軌道に乗っているようです。

純利益率も少しずつ上がってきていることから単純な規模の拡大だけに留まらず、その質も上がってきているようです。

投資家目線で見た魅力的な会社とそうでもない会社の違い

  • A:ROE(自己資本利益率)
  • B:FCF(フリーキャッシュフロー)
  • C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

A:ROE(自己資本利益率)

ROE、つまり「投資家から預かったお金を使っていかに効率良く利益を出しているか」という観点で企業をチェックする場合、全世界的に見て

  • 5%未満=最悪
  • 5%=微妙に悪い
  • 10%=普通
  • 15%=まあまあ良い
  • 20%以上=素晴らしい

となります。

ではROEの直近3年間の推移を見てみましょう。

表4

レンジで言うと「微妙に悪い~普通」なので、お金の使い方はあまり上手くないようです。

しかし経年変化ではROEが上がってきていることはプラスポイントかもしれません。

B:FCF(フリーキャッシュフロー)

表5

※営業CF・実質設備投資・ネットFCFの単位は百万円

毎年の営業CFの内だいたい65%を設備投資に使用しているので、事業維持にそれなりにお金がかかっているようですが、それでも毎年9,000億円以上の自由資金を残せているのは驚異的です。

配当も買収もなんでもやり放題に見えます。

C:不況時の売上・純利益・営業CFの推移

表8

※単位は百万円

黒字はキープしてはいますが、売上高・純利益・純利益率ともに徐々に下降していることから景気の影響は多少なりとも受けるようです。

ただ大勢には影響がなく、会社としてちゃんとやっていけるとは思います。

まとめ

これまでNTTを数字で見てきたことをまとめると、

  • ・「移動通信」は事業としてのクオリティが圧倒的に高く、依存度も高い
  • ・「長距離・国際通信」と「データ通信」は個人技は弱いがその他の部分でカバーした結果、事業としての総合的なクオリティは「移動通信」に引けをとらない
  • ・かなりドメスティックな企業
  • ・財務は普通くらいの健全性で取り立てて良くも悪くもない
  • ・経営は堅実そのもの
  • ・お金の使い方は上手くない
  • ・この規模の大企業には珍しく、成長軌道に乗っている
  • ・景気の影響は受けるが大したことはない

ということになるでしょう。

ES・面接での想定訴求ポイント

ここでは有価証券報告書で調べてきたことを実際のESや面接でどうやって活かしていけるか、という点に絞って想定される訴求ポイントを挙げます。

順当に「移動通信」を攻める

誰が見ても明らかにこの会社の根幹を成すメイン事業は「移動通信」です。

なので会社側の需要へのマッチということを念頭に置くのであれば「移動通信」に携わりたいこと(つまりはNTTドコモに入りたいこと)をアピールするのが合理的なのではないかと考えます。

「長距離・国際通信」と「データ通信」を攻める

上記で「会社側の需要へのマッチの為に『移動通信』に携わりたいことをアピールする」ということを言いましたが、「そもそも携帯電話事業には携わりたくない」という方向けの代替案としては「長距離・国際通信」と「データ通信」に携わりたいことをアピールするのが良いのではないかと思います。

基本的な考え方としてはさきと同じで「会社側の需要へのマッチ」なのですが、それが可能なのは「長距離・国際通信」と「データ通信」は総合力で見ると絶対王者「移動通信」に匹敵する力を持っているからです。

ただ数値を見る限りではNTTグループで一番大きな顔が出来るのはやはり「移動通信」であり、特に職種にこだわりがないのであれば「移動通信」に携わりたいことをアピールするのが良いのではないかと思います。

「潤沢な自由資金の存在」と「成長軌道に乗っている会社であること」を攻める

この2点から導き出される最適な人材は「自分で新規事業を立ち上げたいと思っているベンチャー志向の人」です。

要は潤沢な自由資金の一部を使って数年後に会社の成長を後押し出来るような新規事業を創出出来そうな人材は会社側の需要もあるのではないかということです。

配当と自社株買いで6,000億円ほど使っているので実質使えるのは3,000億円くらいですが、それでもそれだけの資金があるので10億円くらい新規事業の創出に使っても怒られないと思います。

ただこれはNTTグループ全体にそういった新規事業を興していって会社を成長を後押ししようというマインドがあるかどうかにかなり左右されるので、そこらへんは実際の社員の人に聞いてみたりした方が良いと思います。

そしてイケるのであれば絶好のチャンスだと思うので、何かアイディアがある人は思い切って飛び込んでみても良いのではないでしょうか。

有価証券報告書で調べたことから使えそうなところを捻り出すとしたら、上記のようになると思います。

有価証券報告書だけでなく、企業の「IR情報」という投資家に向けて公表している情報には業績や今後の方針などをわかりやすくパワーポイントでまとめたものもあるので、興味を持たれた方はそちらも見てみると良いかもしれません。