もくじ
1. はじめに
こんにちは。今回は製薬業界を目指す研究職・MR職志望の就活生を対象に、製薬業界の業界研究を薬品の種類別にまとめてみたいと思います。
平成26年度における製薬業界全体の平均年収は724万円でした。製薬業界は他業界と比較して高所得が見込める上、福利厚生もきちんとした企業が多いことから人気の高い業界です。
また、薬というツールを使うことで医師とは違う形で人の命を救うことに直接関われるという社会貢献度の高さも魅力の一つでしょう。
しかし、一口に医薬品と言っても、実はそれは次の3つに大別されます。
- (1)新薬
- (2)ジェネリック医薬品
- (3)OTC医薬品
の3つです。
日本には約300社の製薬企業があると言われていますが、各社の経営戦略は様々です。新薬研究に特化する企業もあれば、ジェネリック医薬品に特化する企業、新薬もOTCも扱う企業など本当に様々です。
製薬企業への就職を志望する場合、新薬・ジェネリック・OTCのそれぞれの特徴と将来性を理解しておくことは重要です。
なぜならば、それぞれの医薬品の特徴と、将来自分が成し遂げたいことと照らし合わせることで、本当に行きたい企業を絞ることができるからです。今回はその手助けをしたいと思い、記事を書かせていただきます。
2. 新薬・ジェネリック・OTCの違いと将来の展望
1. 新薬の視点から製薬業界を業界分析
日本の医薬品の売り上げのうち、約8割を占めているのが新薬です。
- 武田薬品
- アステラス製薬
- 大塚製薬
- エーザイ
- 第一三共
など、日本を代表する製薬企業の多くは新薬を開発しています。
新薬とは何か
新薬とは、「これまでの薬では実現できなかった効果をもたらす薬」のことです。
ヒトに投与する際の確かな安全性を確保するために、10~20年という歳月と1000億円とも言われる開発費が投じられます。
新薬の製薬に携わる魅力
これまでになかったものを新たに生み出し、多くの患者さんの命を救う、あるいは負担を軽減することができるという魅力があります。
がん糖尿病、アルツハイマー病など、現代医学では根治することができない多くの疾患が存在するため、今後も新薬に対する需要は尽きることはないと思います。
企業にとって、新薬を開発することの最大のメリットは、高い利益率にあります。新薬は特許によって10年間は独占販売が可能なため、例え1000億円の開発費がかかっても、最終的には利益をもたらすことができるのです。
この莫大なリスクを負ってまで開発される新薬の魅力はなんといっても以下の3つにあります。
- (1)今まで治せなかった病が治せる
- (2)今まで医師が手術しないと治らなかった病が治せる
- (3)今まで別の高額な薬で無いと治らなかった病が治せる
これらによって、医療費の増加や医師不足といった先進国が抱える問題を解決していくことが出来ます。医師は人の命に携わる尊い仕事のひとつです。しかし、医師は1人の患者を治すことしか出来ません。
一方で、薬は一度それが世に出れば、医師がいなくても人々を健康へと導くことができるんです。健康保険から医師に払っていた人件費の一部が払わなくてもすむ様になるので、医療費の削減につながるんですね。
新薬のデメリット
一方で、新薬開発の成功率は3万化合物に1つと言われています。奇跡的な数字です。すなわち、新薬の開発は数100億円の研究開発費を投じて失敗に終わる場合も少なくなく、従って、将来の安定性という面では、やや不安定な部分もあるというのが実際のところです。
2. ジェネリック医薬品の観点から製薬業界を業界分析
ジェネリック薬品はCMもさかんに放送され、製薬業界を志望する就活生の皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか?代表的な国内ジェネリック医薬品メーカーとしては、
- 日医工
- 沢井製薬
- 三和化学研究所
- 東和薬品
などが挙げられます。尚、医療用医薬品の売り上げに占めるジェネリック医薬品の割合は約8%とまだまだ少ないです。
ジェネリック医薬品とは
医薬品は特許が切れると独占権が失われ、あらゆる企業が同じ有効成分を含む薬剤を販売することができるようになります。ジェネリック医薬品とは、「この新薬の特許が切れた後の新薬を真似て市場に出回る医薬品のこと」を指します。
ジェネリック医薬品に携わる魅力
新薬よりも後に世に出回るということから、『後発医薬品』とも呼ばれます。ジェネリック医薬品は、先発品と同じ有効成分を含んで作られています。そのため安全性試験を省くことができるため、研究開発期間が短くコストも削減でき、結果として先発品(新薬)よりも安価に患者さんに提供できる点がジェネリック医薬品の強みと言えます。
また、先発品と同じ有効成分を含み、体内に投与した際の血中濃度推移(血液中における消失の仕方)に有意な違いがなければどのような医薬品もジェネリック医薬品として上市できます。
つまり、色、ツヤ、形、味などに工夫を懲らし、先発品に付加価値を付けた医薬品を世に出すことができるということです。
安価で扱いやすいより良い薬を提供できるという点がジェネリック医薬品最大の魅力であると考えます。また、医療費削減の目的で、政府はジェネリック医薬品の消費を進めているため、今後の需要も高まることも予想されます。
ジェネリック医薬品は競争市場
一方で、特許がないため競争が激しい業界であるという特徴があります。新薬の特許が失効しているため、ジェネリック医薬品はどこの会社でも作ることができるからです。各社、どの会社よりも速く、いい医薬品を提供するために各社がしのぎを削っています。
3. OTC医薬品の観点から製薬業界を業界分析
OCT医薬品とは
OTCとは「over the counter(カウンター越し)」の略称で、その名の通り、「薬局やドラックストアのレジで購入が可能な医薬品」を指します。そのため『大衆薬』や『一般用医薬品』とも呼ばれます。
OTC医薬品の売り上げ比率が高い企業としては、
- 大正製薬
- 第一三共ヘルスケア
- 佐藤製薬
- エスエス製薬
などが挙げられます。OCT医薬品の売上に占める割合は約10%です。
OCT医薬品に携わる魅力
昨今では、症状の軽い疾患の治療や症状の緩和は、患者自身が自分で行う『セルフメディケーション』の考え方の広がりや、安全性が確保された医療用医薬品をOTC医薬品に転換するスイッチOTCの普及もあり、OCT薬品の今後の需要は高まることが予想されます。新薬やジェネリック医薬品は医者からの処方箋なしには入手できません。一方、OCT医薬品は誰でも手軽に購入できることからも、より多くの患者さんの健康維持に広く貢献できるという特徴があります。
OCT医薬品のデメリット
一方で、OTC医薬品は新薬やジェネリック医薬品とは大きく異なる特徴があります。それは、安全性が確保された薬物を用いて、軽度な疾患の治療しかできないという点です。
つまり、風邪や軽い皮膚炎、胃腸不調などに対するアプローチはできますが、がんや糖尿病、認知症などの難病に対するアプローチはできないということです。疾患の重度に関係なく、より多くの患者さんの健康維持に関わりたいというあなたにお勧めです。
3. まとめ
以上、製薬業界研究の一環として新薬、ジェネリック医薬品、及びOTC医薬品のそれぞれの特徴から、製薬業界についてまとめました。
薬の種類から見る製薬業界の業界研究まとめ
ちなみに私は新薬メーカーの研究職で就職することになっておりますが、就活中は、ジェネリック医薬品メーカーもOTC医薬品メーカーも受けていました。
最終的には新薬の研究開発の道を選んだものの、ジェネリックもOTCも、それぞれを必要としている患者さんがいらっしゃいます。全てが一長一短ですので、どれが一番いいのかについて答えは出せないと思います。
大事なことは、将来企業で働くことで、何を成し遂げたいかということだと思います。今回の記事を参考にして頂き、あなたが志望すべき製薬企業を絞る手助けになれば幸いです。